安倍晋三首相は27日、福岡市内で講演し、新たな経済対策の事業規模を28兆円超とする方針を表明した。国・地方の追加支出に財政投融資を加えた「財政 措置」は13兆円とし、「大胆な経済対策をまとめたい」と述べた。政府はこの対策に、来年度からは予算化しない方針だった低所得者向けの「簡素な給付措 置」の2年半延長も盛り込む。政府は年6000円の現行水準を年4000円とし、2年半で1万円を給付する方針だが、公明党は水準を維持して計1万 5000円を給付するよう主張。調整が続いている。
首相が参院選直後の今月12日に、石原伸晃経済再生担当相らに経済対策策定を指示した際は「10兆円超の規模」との見方が多かったが、首相は2倍以上の額を示し、アベノミクス推進の姿勢を鮮明にした。ただ、財源は明示しなかった。
28兆円超の規模は、近年ではリーマン・ショック後に麻生政権が策定した2008年12月の対策(事業規模37兆円)や、09年4月の対策(同56.8 兆円)に次ぐ規模だ。8月2日に閣議決定し、今秋の臨時国会に提出する16年度第2次補正予算案や、17年度当初予算案などに関連予算を計上する。
対策は、リニア中央新幹線の大阪延伸を最大8年前倒しするなどのインフラ整備や、首相が掲げる「1億総活躍社会」関連予算の重点配分などが柱。保育、介 護の受け皿整備や、給付型奨学金の創設、年金受給に必要な保険料納付期間を25年から10年に短縮する無年金者対策などの「分配」重視策も並べた。
2年半延長する低所得者向け給付金は、消費税率を8%に引き上げた14年度から負担軽減策として実施し、今年度で終わる予定だった。消費税率10%への引き上げが来年4月から2年半延期されるのに伴い、同じ期間延長する方針だ。
また政府は、公明党が求めている「プレミアム付き旅行券・商品券」発行の「将来的な実施」を対策に記すことも検討している。
首相は講演で、27年ぶりの自民党の参院単独過半数確保に触れ、「私の政治家人生で初めての経験だ。それほどまでに安定した政治基盤を国民からいただ き、引き締まる思いだ」とした上で、「自民党と公明党の連立という強固な土台の上に、助け合いながら政策を一層推進する」と公明党への配慮も示した。講演 は福岡県内の経済団体などが主催した。【梅田啓祐、小山由宇】