韓国の輸入禁止に伴い大量処分される宮城県の養殖ホヤが全国の注目を集めたことを逆手に取り、国内消費を喚起する動きが広がっている。宮城県石巻市のホ ヤ養殖業者や県などは「国内の認知度は低く、伸びしろが大きい」と仙台や首都圏でのPRに力を入れる。東日本大震災の津波被災に続くピンチをチャンスに変 え、宮城の看板食材に成長させようと意気込んでいる。
石巻市谷川浜のホヤ養殖業渥美貴幸さん(33)は10日、仙台市青葉区の仙台ロフトであったホヤのワークショップの講師を務めた。
目利き直伝
「丸いほうが肉厚」「生きているホヤは殻をつつくと膨らむ」。漁師直伝の話に15人の参加者は聞き入った。若林区の会社員児島永作さん(39)は「現場の様子が浮かび、よりおいしく感じられる」と語った。
渥美さんは養殖の合間を縫って仙台市でのイベントなどに駆け付け、ホヤの魅力を発信する。「国内のホヤの8割は宮城産。仙台の人たちにもっとうまい新鮮なホヤを食べてもらいたい」と力を込める。
県は韓国の禁輸継続を想定し、2015年に首都圏でのPR事業を始めた。東京・池袋の県アンテナショップ「宮城ふるさとプラザ」などで積極的にイベントを仕掛ける。県漁協と首都圏の飲食店の仲介にも力を入れる。
船上試食も
宮城産ホヤを味わえる首都圏の店を網羅したパンフレットも作製、配布した。その一つ東京・神田の「竹仙」は、ホヤの刺し身や天ぷらなどを提供する。料理長 の瀬古英三郎さん(36)は「東京でも新鮮なホヤが手に入るようになった。ホヤ目当てで来店する若い人も増えた」と説明する。
生産者、加工業者、愛好者でつくるPR団体「ほやほや学会」(石巻市)は、「女川ほやほやツアー」を企画した。8月6日から1泊2日の日程で、水揚げや船上試食、各浜のホヤを食べ比べる「利きホヤ」を体験してもらう。
学会の田山圭子会長は「採れたてのホヤを味わってもらい、多くの人に魅力を広めてほしい」と期待している。
[宮城県産養殖ホヤの大量処分]最大の出荷先だった韓国の輸入禁止が続き生産過剰となった。県漁協は値崩れを防ぐため、国内向けの約4000トンを除く計1万トン弱を処分する見通し。