<宮城県南へウエルカム>自転車に乗り被災地周遊

宮城県南4市9町が訪日外国人旅行者(インバウンド)誘致に連携して取り組んで3年目になる。一部の地域は観光客が増えたが、全体に効果が及んでいるとはいえない。豊かな自然と伝統文化に恵まれたポテンシャルを生かし、地方創生にどう結びつけるか。試行錯誤する県南を歩いた。(6回続き)

◎インバウンド誘致は今(2)駆ける

全長114.8キロに及ぶ長大な被災地周遊サイクリングコース。仙台空港を利用する外国人旅行者(インバウンド)が将来、ここで銀輪を駆る姿が見掛けられることが期待される。

<空港が発着点に>
スタート地点は空港だ。北上し、東日本大震災で甚大な被害を受けた名取市閖上地区を抜け西進。内陸部を南下し、山元町で折り返して再び沿岸部に出て同町の防災拠点や亘理町の鳥の海周辺、岩沼市の慰霊公園「千年希望の丘」、ヒツジ牧場などを巡って戻る。
コースを設定した名取、岩沼両市の担当者は「空港はあるが両市とも素通りされている。外国人に人気の自転車で少しでも滞在時間を長くさせたい」と意気込む。
設定に着手したのは2016年度。自転車などで移動し自然や文化を体感する観光ルート「ジャパンエコトラック」の認定を目指した。エコトラックはアウトドア用品大手「モンベル」(大阪市)などでつくる推進協議会が提唱。認定コースのガイドマップは全国のモンベル店舗に置かれる。
17年度に認定されたルートのコンセプトは「震災復興を感じる旅」。もともとつながりの深い亘理、山元両町も含めてロングコースを設定し、他にも七つのルートを決めてガイドマップに仕立てた。日本語版だけでなく台湾人向けの中国語や、英語バージョンも出来上がる。
ルートに魂を込める取り組みがスタートした。
「仙台空港周辺広域観光地域協議会」を組織する両市は今月15日、空港を利用するインバウンドらに自転車を無料で貸す「サイクリング事業可能性調査」を開始。空港に10台用意し、「国際便に搭乗する前の待ち時間などに周辺を巡りたい」といった需要があるのかどうかを確かめる。
ルートを記したパンフレットとは別に、レンタサイクルの外国語表記のチラシも用意。空港周辺の簡単な地図や、お勧めスポットを載せる。

<施設再開追い風>
空港周辺では20年秋、津波が押し寄せた名取市サイクルスポーツセンターが天然温泉付きで再建され、利用が始まる。東北で唯一、専用走路があったサイクリング施設の再開も追い風になると考えられている。
仙台国際空港の岡崎克彦営業推進部長は「サイクルツーリズムの強化はインバウンドの増加につながる。一見地味でも、被災地を中心としたルートは彼らを持続的に引きつける第一歩だ」と指摘。走路としても期待されるかさ上げ道路の早期開通を求める。(岩沼支局・桜田賢一)

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