要介護状態になっても安心して暮らせる集合住宅の在り方を探るため、宮城県は2月2日から1カ月間、仙台市内の分譲マンションをモデルに実証調査事業に取り組む。建物内にさまざまな相談に応じる「ワンストップ窓口」を設け、外部の医療・介護サービスなどにつなぐ。新年度には気仙沼市内の災害公営住宅でも同様の調査を行う方針だ。
三菱総合研究所に事業委託して2017年度から事前調査を進めてきた。県によると、集合住宅の住民に対する福祉サービスは、これまで開発業者などの主導で進められてきたケースはあるが、分譲後に外部の多様な福祉事業者などとつなぐ試みは全国でも珍しい。
実証モデルとなるマンションは、青葉区の「ライオンズタワー仙台広瀬」(404世帯、約1000人居住)。共用施設が充実した市街地の大型集合住宅のモデルとして県が選定し、管理組合の了承を得た。
火-土曜の午後1~7時、1階ホールに住民の各種相談に応じるワンストップ窓口を設ける。窓口対応に役割を特化した管理人が1人常駐するほか、不在時は住民有志が運営支援スタッフとして待機する。
相談内容によって事業に協力する社会福祉法人「青葉福祉会」(仙台市)や地域包括支援センターの専門員に連絡する。具体的なコーディネートは三菱総研がバックアップ。窓口にはテレビ電話のタブレットを置き、住民から専門員への直接相談も可能にする。
県は同マンションや気仙沼市の災害公営住宅など、県内5カ所の集合住宅で事前に意識調査を実施。老後も安心できる環境が整えば現住居を「ついのすみか」にしたいという希望が多かった。配食や健康増進など幅広いサービスを組み込みながら事業効果を確かめ、20年度には一定の課題解決モデルを示す。
東日本大震災によって慣れない高層の災害公営住宅で暮らす高齢者が増え、仙台都市圏では人口増加で将来的に介護施設不足が顕在化する恐れがある。県長寿社会政策課の担当者は「高齢化は全国共通の課題。老後も集合住宅に住み続けられるような新たな仕組みを全国に発信したい」と話す。