政府は11日午前、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の魚釣島(うおつりじま)、南小島(みなみこじま)、北小島(きたこじま)の3島を20億5000万円で購入する売買契約を地権者と締結し、3島を国有化した。同日午前の閣議で購入費を今年度予算の予備費から支出することを決定した。今後は海上保安庁が3島の維持・管理にあたる。
外務省は11日、国有化に強く反発する中国側と意見交換するため、杉山晋輔アジア大洋州局長を北京に派遣した。中国政府高官と会談し、12日に帰国する予定。玄葉光一郎外相は11日の記者会見で「日中関係の安定的な発展が阻害されてはならない。誤解がないように意思疎通を図る」と述べた。
藤村修官房長官は同日の記者会見で「島の所有権を地権者から国へ移転する。他国との間で何ら問題が起きるものではない。今日までも国が維持・管理しており、そんなに変わりのない状態だ」と述べた。購入額の根拠については「島を長期にわたり、安定的に維持・管理する価値として、社会的に是認される」と説明。市場価値ではなく、島を埋め立てによって再生すると仮定して専門家が「20億5000万円が上限」と算定していたことも明らかにした。
政府は3日、埼玉県在住の地権者と島の購入で大筋合意。4日には東京都の石原慎太郎知事に、知事が求めていた漁船の避難港などの施設整備は見送る方針を伝えた。石原知事は国の購入を容認する一方、「(衆院解散・総選挙後の)新しい政府に船だまり(漁船の避難港)を造ってもらう」とし、購入費として集まった寄付金14億円超は現政権に渡さない考えを示している。
尖閣諸島の5島のうち、今回国有化された3島は政府が02年度から地権者と賃貸借契約を結び、毎年更新していた。また久場島(くばじま)は政府が地権者から別に借り上げ、米海軍が射撃場として使用。大正島(たいしょうとう)はすでに国が所有している。【飼手勇介、横田愛】