<就活>選考繰り下げ 企業イベント開催、学生と水面下接触

大学生の就活が本番を迎えている。経団連の指針改定に従い、大手企業の多くは選考日程を繰り下げているが、求人意欲の高まりから、さまざまなかたちで学生との接触の場を増やしている。昨年までと様相が異なっている就活の現場をみた。

【就活、短期決戦】3カ月繰り下げ、焦る企業

「先輩から聞いている体験談が生かせず、日々手探り」。早稲田大4年の男子学生が話す。

就活を意識したのは昨年5月末。「来月から夏のインターンシップ募集が始まる」と友人らから聞き、取り残されると焦った。以来、今春にかけ5社のインターンに参加し、秋以降は企業セミナーにも積極的に出席してきた。

春からは数社で面接が進行中。しかし第1希望の大手商社は企業セミナーへの参加もこれからで「ヤマ場はまだ先」とみる。昨年のこの時期、大手企業の内々 定のピークはすでに過ぎ、ほとんどの先輩は就活を終えていた。「もちろん就活は手を抜けないが、ゼミや卒論の準備も気になる。昨年通りの日程だったら良 かったのに」

◇かえって長期化も

経団連の指針改定で、会社説明会などの募集は従来より3カ月遅れて3月開始に、面接などの選考は4カ月遅れの8月開始に後ずれした。学業優先のために就活を短期化するのが狙いだが、早くから準備に取り組んできた学生ほど就活が長期化するジレンマもある。

指針と距離を置く企業は春先から内々定を出しており「採用ペースは昨年と変わらない」(IT大手)との声がある。中堅・中小企業は内定辞退を見込み昨年より選考や内々定出しを早める傾向にある。

一方、大手企業は「まだ静かだが水面下の動きがわかりにくい」(東京の有力私立大就職部長)。人材支援会社リクルートキャリア(東京)が企業3989社 を対象に行った調査(昨年12月~今年1月実施)によると、7月までに面接を行うとする企業が65.6%、内々定を出すとする企業が52.2%。指針の拘 束力は以前より弱まっている。

◇イベント花盛り

「OB・OG交流会のお誘い。私服OKです」。インターンシップに参加したことのある金融会社からの連絡に、慶応大4年の女子学生は「交流会といっても実際は選考のワンステップ」と受け止める。

役員座談会、中堅社員交流会、ランチミーティング、ジョブマッチング……。名称では内容がつかみにくい企業主催のイベントも増えている。公募をうたいながら、インターンやセミナーに参加した学生を優先的に誘うケースもあり「説明会以上・面接未満」という狙いもみえる。

説明会も、大規模な合同説明会より、大学内でのセミナーなどに軸足を移す傾向がある。セミナーを支援する人材会社は「研究室やゼミ単位など、より小さなセミナーも好まれている。企業はさまざまな形で接触機会を増やしている」と説明する。

◇出遅れてもOK

「出遅れたと思ったが、結構楽しめている」。2月末から本格的な就活に入ったという共立女子大4年の学生は話す。昨年末までサークル活動に打ち込み、 1、2月はバイトで就活資金をためて本番に備えた。当初は焦りもあったが「何がしたいか絞り込めてきた」。生損保や大手メーカーの一般職を目指すという。

東京の中堅私立大4年の男子学生も3月スタート組だ。ゴルフ部の活動最優先で過ごしてきたが、今は広告業界に絞った就活中心に切り替え、手応えも感じている。

20年以上、就活指導の経験を持つハナマルキャリア総合研究所(東京)の上田晶美代表は「昨年と異なる日程に学生には不安もあるようだが、4年生からの 就活スタートは気持ちの切り替えもしやすいはず。景況改善から企業の採用意欲は強い。学生はチャンスは広がっていることを前向きにとらえ活動してほしい」 と話す。【渡辺精一】

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