東北市長会と宮城県市長会の両会長ポストを、仙台市長が務める慣例が崩れる可能性が出てきた。同市長に22日就任した郡和子氏は元民進党衆院議員で、7月の市長選は国政与野党が激突する構図となった。政府与党との関係悪化を懸念する市長からは「仙台外し」の声が高まっている。
「郡さんが会長になれば国に要望しても届かない。そんな状況は他の市長も望んでいない」
宮城県内のある市長は、奥山恵美子前仙台市長の退任に伴う県市長会長の後任に、郡氏を推さない考えだ。新会長を選出する28日の定例会議を前に「他県では人口の多寡で会長を決めていない例もある」と、仙台の「あて職」を見直す契機にしたいと強調した。
一方で、別の市長からは「(会長市が担う)会事務局は仙台以外では手に負えないだろう。今回も慣例通りでいいのではないか」と反対意見も聞かれる。
東北、宮城県両市長会は毎年2回、総会などを開き、東日本大震災からの復興など重要課題に関する国や県への要望事項を決めてきた。県市長会は県選出国会議員や知事との行政懇談会も定期開催している。
東北市長会の陳情や要望活動は、会長が関係省庁の大臣や与党幹部に直接働き掛ける機会も多い。奥山会長として最後となった6月の要望活動の際は、吉野正芳復興相や松野博一文部科学相(当時)と対面した。
陳情・要望に際し、多忙な大臣が面会の時間を割くかどうかは、地元の与党国会議員の橋渡しが大きい。宮城県以外の市長の一人は「県内の市長から『与党系の仙台市長でなければ政府とのコミュニケーションが取れない』と心配する声が出ている」と指摘。東北市長会は相馬市で10月25日に開く総会で新会長を決めるが、「宮城県市長会の判断は東北市長会長選びにも影響する」と注視する。
これまで両市長会事務局の仙台市から陳情・要望の仲介を依頼されてきた土井亨復興副大臣は、衆院宮城1区で郡氏と4度に渡る激戦を繰り広げてきた。
土井氏は「市長会長として仙台から要望があれば今まで通り対応する」と話しており、両氏の「大人の対応」が求められそうだ。
市によると、過去に仙台市長が東北市長会長から外れた例は、ゼネコン汚職で当時の市長が逮捕され辞職した後の1993年10月~94年10月のみ。宮城県市長会ではないという。