仙台藩祖伊達政宗の三百回忌記念で1935(昭和10)年に制作された歌「御藩祖(ごはんそ)をどり」が、19日に開幕する仙台・青葉まつり(まつり協賛会主催)の開会式で披露される。かつて特高警察によって発禁処分となった幻のご当地ソング。政宗没後350年の節目に始まった青葉まつりの舞台で、83年ぶりに復活する。
開会式は19日、仙台市青葉区の勾当台公園市民広場であり、御藩祖をどりは午後0時10分から、同市の男声合唱団「いずみオッチェンコール」の約50人が歌声を響かせる予定だ。
太鼓と笛のおはやしは泉区の創作和太鼓集団「加茂綱村太鼓」が担う。仙台の礎を築いた藩祖をたたえる歌を、4代藩主伊達綱村の名を頂いたグループが演奏で彩る。
合唱団は昨年秋から練習を重ね、市民の前で発表する機会を心待ちにしてきた。指揮する大泉勉宮城教育大名誉教授(83)は「メロディーは覚えやすく、威勢のいい掛け声と手拍子も入る。会場を巻き込んで一緒に盛り上がりたい」と話す。
御藩祖をどりは西條八十作詞、中山晋平作曲。35年5月、仙台産業観光博覧会で発表されたが、県警察部特高課が歌詞の一部を問題視して普及を禁じた。7番まである歌詞の3番目「仙台城に祀(まつ)る玉座の十四代」の「玉座」が不敬と見なされた。以来、二度と歌われることはなく、長く歴史に埋もれたままになっていた。
この事実に着目した市シルバーセンター館長の佐々木伸さん(63)が歌の発掘と再演に挑戦。「西條八十全集」や中山晋平記念館(長野県中野市)で歌詞と楽譜を見つけ、合唱団の協力で復元を果たした。
開会式の会場で御藩祖をどりの歌詞と経緯を載せたパンフレットを配布する。佐々木さんは「政宗ゆかりの青葉まつりで再演できるのは意義深い。長く親しまれるよう、将来は歌に合わせた踊りも付けられたらいい」と語る。