<御藩祖をどり>幻のご当地ソング82年ぶり復活 伊達政宗三百回忌に制作も…特高警察の圧力で「発禁」

仙台藩祖伊達政宗の三百回忌を記念して1935(昭和10)年に制作されたものの、たった一度演奏したきりの幻のご当地ソング「御藩祖をどり」が、82年ぶりによみがえる。当時の特高警察の圧力で発禁処分となり、市民が親しむ機会が長く失われていた。生誕450年の節目の今年、仙台市の団体職員によって発掘され、男声合唱団が再現に取り組んでいる。

「御藩祖をどり」は「東京音頭」などをヒットさせた作詞家・西條八十、作曲家・中山晋平の人気コンビの作品で、仙台観光協会長だった故渋谷徳三郎仙台市長が自ら依頼した。35年は官民を挙げた「政宗公三百年祭」と仙台産業観光博覧会があり、歌はその開会式で披露された。ところが、県警察部特高課が歌詞の一部を問題視して普及禁止を命じた。
「“御藩祖をどり”御難」と報じた当時の河北新報記事に、ブックレット「奥州・仙台の謎解きシリーズ」を自費出版している市シルバーセンター館長の佐々木伸さん(62)が着目。歴史に埋もれた原曲探しに乗り出した。
詞は「西條八十全集」で確認できた。3行ずつ7番まであり、いずれも政宗の事績を五七調で格調高くたたえる。3番にある「仙台城に祀(まつ)る玉座の十四代」の「玉座」が不敬に当たり、治安警察法16条違反だとされた経緯も分かった。
音源は見つからないが、長野県中野市の中山晋平記念館に中山の直筆楽譜が保管されていることを突き止め、提供を願い出て入手。詞と曲がそろい、佐々木さんは知人のいる仙台市の男声合唱団「いずみオッチェンコール」に演奏を持ち掛けた。
同合唱団の阿部琢也副代表(75)は「忘れられたままの記念の歌が日の目を見る歴史的な出来事。とてもうれしい」と歓迎する。弾むような力強い曲調に、指揮する大泉勉宮城教育大名誉教授(82)は「はやし言葉も入って乗りがいい。歌うと元気が出る」と語る。
佐々木さんは「『御藩祖をどり』は仙台城跡の騎馬像建立と並ぶ三百年祭の目玉事業だった。改めて人々に受け入れられ、地域の宝となる歌になってほしい」と願う。
戦争を含む長い時間を経てようやく再演へ。同合唱団は練習を重ねており、今後さまざまな公演の機会をとらえて披露する考えだ。別に鑑賞希望があれば相談に応じる。連絡先は合唱団事務局長の米倉さん022(372)5874。

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