仙台市出身の恩田陸さん(52)が「蜜蜂と遠雷」で第156回直木賞を受賞した。2005年の初ノミネート以来、候補6度目での受賞に、本人の人柄を知るかつての同級生や文学関係者らから「待ち望んだ快挙」と祝福する声が上がった。
恩田さんは父の転勤で幼少時から引っ越しを繰り返し、仙台で暮らしたのは五橋中入学から2年間だけだが、両親が仙台出身で現在も実家がある。
五橋中の合唱部メンバーで、毎日一緒に登下校したという学校法人東北学院職員の熊谷紀子さん(52)=仙台市青葉区=は「長年の執筆活動が認められてうれしい。今後の活躍も楽しみ」と喜ぶ。「明るくカラッとした性格。音楽と本が大好きでいろんな作文コンクールでしょっちゅう入賞していた」と当時を懐かしむ。
宮城県出身作家の受賞は第8回の大池唯雄(1908~70年)と第131回の熊谷達也さん(58)に続き3人目。ゆかりの文学者の紹介に努める仙台文学館(青葉区)は、近く恩田さんの特集コーナーを館内ロビーに設ける予定だ。
愛読者でもある学芸員の阿部朋子さん(38)は「過去の候補作で受賞してもおかしくないけれど『蜜蜂と遠雷』で決まったのが一番うれしい」と声を弾ませる。国際ピアノコンクールを舞台とした青春群像劇の本作は「モデルとなった都市こそ違うが、仙台にも国際音楽コンクールがあって物語をより身近に感じながら読める」と話す。
出版不況下、街中の書店にとっても明るい話題だ。青葉区のヤマト屋書店仙台三越店の鈴木典子さん(39)は「本格派のエンターテインメント小説。従来以上にファン層を広げそう」と期待する。地元出身に加え既刊書も数多くあり「店内の目立つ場所で大きく展開したい」と意気込む。