<所在不明乳幼児>35市区で延べ355人 毎日新聞調査

住民票を移さないまま一家で転居するなどし、行政機関が安否や所在を確認できない乳幼児(0~3歳)が、全国の主要74市区のうち35市区で延べ355人に上ることが、毎日新聞の調査で分かった。こうしたケースは貧困や孤立による児童虐待につながるリスクもあることから、子どもの発見に向け早急な対応が求められそうだ。
 毎日新聞は8月、東京23区、道府県庁所在地、政令市の74市区にアンケートし、乳幼児健診に来なかったため、自治体職員が家庭訪問するなどした結果、住民登録地に住んでいなかった子どもについて、データがある直近年度(09年度か08年度)の人数を尋ねた。「消えた子ども」の全国規模の人数が明らかになるのは初めて。
 乳幼児健診は、市区町村が母子保健法に基づき、子どもの身体計測や診察、歯科指導、発育相談などを行う。同法上は(1)1歳6カ月~2歳(2)3~4歳の2回だが、多くの自治体が生後3カ月ごろから上乗せで実施している。
 乳幼児の所在不明が判明したのは▽浜松市40人▽津市24人▽京都市、神戸市21人▽さいたま市、佐賀市、東京都大田区各20人--など35市区で延べ355人。年度内に複数回の健診を受診しなかった子どもは重複してカウントされている。26市区は「統計がない」と回答。13市区は所在不明のケースはなかった。
 「オートロックマンションや表札がない家が増えており、転居しているかどうかも把握できない」(仙台市)、「自治体には捜索権限がない」(奈良市)などと、自治体による対応の限界を訴える声もあった。日系人労働者が多く住む都市は「外国人登録を残したまま、帰国するケースが多い」(津市)という特殊事情もあった。
 西澤哲・山梨県立大教授(臨床福祉学)は「健診は子どもに与えられた権利で、受診させない親は児童虐待のリスクが高い」と話している。【平野光芳、遠藤孝康、稲生陽】

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