科学者団体の日本学術会議は28日、原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分に関し、「国民的な合意を得られるまで暫定保管すべきだ」とする政策提言書を 公表した。原則50年の暫定保管中に合意形成を図り、最終処分地を選ぶとの手順を提示した。原発の再稼働については、暫定保管の計画作りを前提条件とする よう国や電力会社に求めた。
国は、使用済み核燃料の再処理で出る高レベル放射性廃棄物を地下300メートルより深い地層で最終処分する政策を堅 持し、処分場選定の準備を進めている。提言書は選定作業を中断し、地上の乾式貯蔵施設で原則50年間、暫定保管するよう要請。保管から30年をめどに、国 民の理解を得ながら地層処分などの技術的検討を進めるよう訴えている。
さらに、暫定保管の計画を策定しないままの原発再稼働を「将来世代に対する責任倫理を欠く」と批判。電力会社には再稼働の前に、各供給エリアに最低1カ所の乾式貯蔵施設を設置するなど、廃棄物対策を具体化させるよう強く求めた。
提言をまとめた同会議検討委員会の今田高俊委員長(東工大名誉教授)が東京都内で記者会見し「原発への国民の不信は根強く、(現状では)核のごみ問題は前に進まない。暫定保管して国民的合意を得る取り組みが重要」と述べた。
日本学術会議は福島第1原発事故後の2012年、現行の最終処分政策の見直しを国に提言。対応を促そうと、具体的見直し案を盛り込んだ提言書作りを進めていた。