<新電力>東北電管内シェア10%に 企業向け軸に急伸

東北電力エリアの東北6県と新潟県の販売電力量に占める新規参入事業者(新電力)の割合が、過去最高の約10%に上った。東北電の料金高止まりも背景に、電気を多く使う企業向けを軸に契約を急伸させている。電力小売り全面自由化から4月で2年。他の大手電力の越境営業も本格化し、「三つどもえ」の攻防が熱を帯びる。

電気・ガス取引監視等委員会によると、家庭向けなどの低圧も含めて全面自由化した2016年4月以降の新電力のシェアはグラフの通り。17年12月の東北電エリアの販売電力量71億4944万キロワット時のうち、新電力は7億919万キロワット時となり、9.9%を占めた。
他の大手電力管内の関西17.8%、北海道17.4%に比べれば小さいが、全国平均の12.7%に迫った。
東北電エリアの新電力シェアを押し上げたのが、企業など大口向けの高圧(契約電力50キロワット以上、2000キロワット未満)の販売量増加だ。高圧は以前から自由化され、新電力は全面自由化した16年4月は4.9%だったが、17年12月には18.4%に達した。
東京ガスなどが出資する新電力最大手エネット(東京)は15年10月、東北電エリアで特別高圧・高圧向けの小売りを開始。契約件数は約1700件に達し、低圧も約9400件に上る。17年10月にはNTTグループに委託して仙台市内に営業拠点を設けた。
エネットの尾島隆伸営業本部課長は「東北は電力入札をしていない自治体も多く、企業を含め顧客開拓の余地がある。復興需要がピークアウトする中、電力切り替えで経費削減する動きが増える」とみる。
一方、既存の大手電力も事業エリアを越えた顧客獲得に乗り出した。経済産業省によると、東北電エリアの他の大手電力の特別高圧・高圧の契約は、全面自由化した16年4月時点でゼロだったが、17年10月は3370件に上った。
特に東京電力エナジーパートナー子会社の攻勢が激しい。かつての大手同士は競争しない習慣は全面自由化以降、なくなった。ある新電力幹部は「他社が太刀打ちできない値下げ幅を提案している」と話す。
迎え撃つ東北電は、13年9月に企業向けの電気料金を平均15.24%引き上げて競争力が低下したが、顧客流出に歯止めをかけようと対抗策を打つ。大口向けに長期割引や包括割引で囲い込みを急ぐ。
東北電は「価格面だけでなく、省エネの実現といった提案に力を入れて選んでもらう」と話す。

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