<日本航空>再上場1年 業績V字回復の背景

2010年に経営破綻した日本航空が、東京証券取引所に再上場を果たしてから19日で1年。業績は急回復しており、植木義晴社長は18日の定例記者会見で、撤退した国内線のうち10弱の路線の復活を検討する考えを表明した。しかし、公的支援を受けての再建に、ライバルの全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス(HD)は「競争環境の格差が膨らんでいる」と批判。来春の羽田空港の国際線発着枠の配分をめぐり、両社の攻防が激化している。【永井大介】
【日航再上場1年】ANAHD 競争環境格差に不満
 「社員全員が当事者意識を持つようになった。破綻時と今ではまったく別の会社に変わった」。18日の記者会見後、毎日新聞のインタビューに応じた植木社長はこう強調した。
 10年1月に会社更生法の適用を申請した日航は、官民ファンドの企業再生支援機構から投入された3500億円の公的資金で資本を増強。銀行団も5215億円の債権放棄に応じ、官民挙げての再建支援が展開された。
 また、京セラ創業者で独自の経営理論を持つ稲盛和夫氏を会長に招き、高コスト体質からの脱却と社員の意識改革を進めた。従業員の3分の1にあたる約1万6000人を削減し、世界一の保有数を誇っていたジャンボジェット機も低コストの中型機や小型機へシフトさせた。
 この結果、13年3月期の営業費用は1兆435億円と破綻前の07年3月期からほぼ半減し、「筋肉質」に生まれ変わった。直近の13年4~6月期も、ANAHDは原油高騰などで56億円の営業赤字だったが、日航は220億円の営業黒字を確保した。
 業績回復を受け、植木社長は会見で、破綻後に撤退した国内の不採算路線約40のうち、10弱の路線の復活を検討する方針を明らかにした。具体的な路線名には言及しなかったが、新幹線など代替交通手段がない路線を中心に検討する。
 民主党政権による公的支援で再建を果たした日航に対し、自民党内では「優遇されすぎだ」との批判が根強く、今後多くの路線再開を求める声が強まる可能性もある。ただ、過去に政治的な圧力で維持させられた路線が経営の重荷になり、破綻に至ったのも事実。植木社長は「これまでのように押しつけられても長くは続けられない」とけん制した。

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