<日銀短観>景気、踊り場抜けず 予想外の「横ばい」

 日銀の3月企業短期経済観測調査(短観)は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)が横ばいとなり、昨秋以降、景気が足踏みする「踊り場」から抜け出ていないことを示唆する内容となった。歴史的な円高の修正など好材料はあるが、原油価格の高止まりや電気料金値上げ、中国経済の減速などのリスク要因も山積している。景気が本格的な回復軌道に乗るか、なお予断を許さない状況だ。
 市場は今回の短観で、大企業・製造業の景況感が改善すると予想していた。昨秋以降の欧州債務危機は、ギリシャへの追加支援が決定して緊張感が緩和。前回調査時点で1ドル=76~78円台で推移していた円相場は、日銀が2月に実施した追加緩和などを受けて円安が進んだ。リスクを避けて“安全資産”の円を買っていた投資家が、円売りに転じている。タイ洪水で被害を受けた通信機器や自動車工場などの生産も持ち直し、自動車や電気機械など外需で稼ぐ加工業種は改善した。
 予想に反して横ばいだったのは、原材料価格上昇の影響を受ける鉄鋼や化学など素材業種などが悪化したためだ。イラン情勢の緊迫化で原油価格が高止まりしており、原材料価格高騰の影響を受けやすい素材業種の景況感は厳しい。国内では原子力発電所の再稼働が見通せない中、夏場の電力不足や電気料金の値上げなどの懸念が根強く、電力多消費型の素材産業には不利に働く。
 また、自動車や生産用機械などは先行きの悪化を予測。欧州や中国経済の減速や、円高などを不安視しているためと見られる。日銀は日本経済の先行きについて「海外の成長や震災の復興需要により、次第に横ばい圏内の動きを脱し、緩やかな回復経路に戻る」と想定するものの、不安材料が顕在化すれば、シナリオが崩れる可能性もある。【窪田淳】

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