宮城県石巻市は5日、中心市街地にある築80年以上の洋風建築物「旧観慶丸商店」を市教委が有形文化財に指定したと発表した。建物の有形文化財は4件目。市教委は博物館機能を持つ複合文化施設のサテライトとして活用する方針で、2016年度末の開設を目指す。
旧観慶丸商店は1930年の建築。当時としては珍しい木造3階の店舗兼住宅で、延べ床面積約850平方メートル。道路に面した外壁を全面タイル張りにする希少な工法を施し、モダンなデザインになっている。
市内初の百貨店で、戦後は陶器店として営業を続けた。東日本大震災の津波で1階が浸水したが、構造に大きな影響はなかった。13年10月に所有者の「陶芸丸寿かんけい丸」(石巻市)が市に建物を寄付。市は歴史文化財の展示施設とする方向で検討してきた。
市教委は本年度、改修工事の設計や耐震補強工事に着手する。事業費約1億7000万円を見込み、財源は国の復興交付金を充てる。開館後は1階を企画展示、 2階は歴史研究家毛利総七郎が収集した「毛利コレクション」などを紹介する常設展示室にする。管理運営は指定管理を検討する。
亀山紘市長は「港町石巻の歴史を語る上で欠かせない建物。その価値から文化財としての保存を決めた。復興のシンボルにもなる」と期待感を示した。