2020年東京五輪・パラリンピックの開催費用削減のため、ボート、カヌー・スプリント会場を宮城県長沼ボート場(宮城県登米市)に変更する案が浮上し、県内の競技関係者から28日、驚きと喜び、不安が入り交じった声が上がった。
県ボート協会の岡本智理事長は「協会として誘致活動はしていないが、『復興五輪』を掲げており、宮城に来ることは喜ばしい」と歓迎。「長沼は国際基準の施設なので大きな改修の必要はないだろう」と話す。
一方、登米市のとめ漕艇協会の湊敬一会長は「コースの伴走路などの整備が必要になり、運営面などこれからの課題も多い。大変だなというのが今の正直な気持ちだ」と困惑気味だ。
登米高カヌー部の工藤大将監督は「驚いた。高校生の選手にとって地元開催は刺激になる。風でコースの水面が荒れないかが心配だ」と指摘する。
布施孝尚登米市長は「県長沼ボート場の認知度が上がり、地元からいい選手が育つ可能性が膨らむという点で登米にとってプラス」とみる。その上で、「過大な投資をして五輪後に維持費用がかさむことがないようにしなければならない」と提言した。
村井嘉浩知事は「復興五輪を掲げる以上、被災地を頭の隅に置いていただけるのはありがたい」と強調。長沼ボート場が国際大会規格の公認A級コースに指定されていることに触れ「五輪に限らず、国際大会の開催が可能な素晴らしい会場だ」とアピールした。
長沼ボート場は、2000メートルのコースを常設で8レーン備えた国内有数の施設。1999年にはアジア選手権が開催された。来年8月はインターハイのボート競技会場となる。
東京五輪・パラリンピック開催費用などを検証している都の調査チームは、当初予定した会場「海の森水上競技場」について建設中止を含め抜本的に見直す提案をする方向で、代替会場に長沼ボート場の名前が挙がった。