東北大雨宮キャンパス(仙台市青葉区)の移転に伴う再開発計画で、東北大が計画主体のイオンモール(千葉市)に跡地を原 則的に更地で引き渡す契約を結んでいることが30日、分かった。周辺は仙台市の緑化重点地区に指定され、市中心部でも希少な緑地帯。イオン側は「残せる木 があるかどうか調査する」としている。
イオン側は東北大が2013年10月に実施した入札で、キャンパスの敷地約9.3ヘクタールを約220億円で落札。東北大はキャンパス内の農学部などを青葉山に移転し、跡地を18年2月までに引き渡すことになっている。
東北大は入札に際し、跡地は落札者に更地で引き渡し、建物の解体や樹木の伐採は同大の責任と負担で実施するとの条件を入札説明書に記載。ただし書きでは落札者が要請した場合、建物や樹木を残す協議に応じるとした。
東北大は13年4月に市や仙台商工会議所とまとめた移転方針で「中心部で貴重な樹林や歴史的資源の保全・活用」を掲げた経緯があり、現在はキャンパス内の記念碑と記念樹計16件を残せないかイオン側に打診している。
市は3月、イオン側と協議の上、跡地に1ヘクタールを超える商業施設を建てられるよう規制を緩和。外周に歩道や空き地、緑地を広くとることなどを盛り込ん だ地区計画を決めた。大規模建築物は環境影響評価の対象で、市は環境保全が適正な計画かどうか有識者でつくる審査会に諮問している。
市中心部の 緑化重点地区全体の緑被率が13%(14年度)にとどまる中、緑被率33%のキャンパス周辺は西公園(青葉区)や榴岡公園(宮城野区)とともに市内有数の 緑地帯に当たる。市の「百年の杜づくり」のシンボルエリアでもあり、「緑の回廊」をイメージして市が街路樹などを整備する愛宕上杉通に隣接する。
イオン側は「建設の弊害になる木は切るが、残せるものは残す」と説明。東北大は「移転方針を踏まえるのが契約の前提だ」と強調するものの、具体的な保存案は決まっていない。市は「緑を極力残してほしいとお願いしている」と話す。