日銀仙台支店は8日、東北の景気について「一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている」とする4月の地域経済報告(さくらリポート)をまとめ、「緩やかな回復を続けている」だった前回1月の基調判断を引き下げた。中国を中心とした新興国の景気減速による生産減少が主な要因で、下方修正は2016年4月以来、3年ぶり。
項目別では、生産は「緩やかに増加」から「横ばい」に下方修正。電子部品・デバイスは「持ち直しの動きが鈍化」から「減少」に引き下げ、生産用機械等も「高水準」から「下げ止まっている」に変更した。
日銀の調査に、秋田の電子部品・デバイス製造業者は「スマホ向けは世界的な需要鈍化で落ち込み、自動車向けも弱含み」と回答。青森の業務用機械製造業者は「人件費上昇への対応で一部製品の生産を海外に移すため、本年度は大幅な減産になる」と明かした。
設備投資は「増加している」から「横ばい」に引き下げた。非製造業の19年度の設備投資計画は、新規出店や物流施設新設が相次いだ前年からの反動減が大きかった。
一方で製造業の計画は前年並みで、生産鈍化の影響は見られなかった。仙台の生産用機械製造業者は「半導体市場の拡大に備え、強気の設備投資スタンスを維持する方針」と話した。
個人消費は「底堅く推移」を維持した。業種別では新型車投入効果の続く乗用車販売を「持ち直しの動き」から「持ち直している」に上方修正。仙台の自動車販売業者は「10月の消費税増税を意識して早めに購入する動きが見られ始めている」と説明した。
東日本大震災の復興需要がピークを過ぎた公共投資と住宅投資は、いずれも「高水準ながらも減少」との判断を据え置き。雇用・所得も「改善している」との判断を維持した。
日銀仙台支店の担当者は「生産は鈍化したが、企業の中国経済に対する見方にはまだ悲観と楽観が相半ばしている。人手不足の深刻化が与える影響などを含め、今後の動向を注視したい」と語った。
[さくらリポート]日銀が北海道から九州・沖縄まで全国9地域の景気判断をまとめた「地域経済報告」の通称。3カ月ごとに開く支店長会議の後に公表する。企業からの聞き取りや経済指標を基に、各地域の景気情勢に加え、個人消費や設備投資、雇用といった個別項目も分析する。企業から聞かれた声も紹介する。桜色の表紙から名付けられた。