東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた宮城県女川町で、被災者自身が生活情報などを発信してきたラジオ局「女川さいがいFM」が、存続の危機に直面している。スタジオのある女川第二小学校が新年度を迎えるに当たり、設置場所の使用期限が切れるのが理由。同局の松木達徳代表(41)は「被災した町の放送局として役目はまだある」と存続を目指している。
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同局は、震災から約1カ月後の昨年4月21日、松木代表らの発案で開設。避難所の炊き出し情報などの災害情報を伝えた。
放送免許は、町災害対策本部に取得してもらい、日本財団の「臨時災害FM局支援プロジェクト」の助成金約734万円を基に、局が独自で運営。校庭に置かれた約6.6平方メートルのプレハブ小屋で、現在もDJを務める住民が、心に残った震災関連のニュースや前日に食べた料理など身近な話題を織り交ぜながら、生活情報や音楽などを流している。
当初は3カ月の約束で校庭を借りたが、移転費用の工面が難しく、年度末まで使用期限を延長してもらっていた。町企画課は「復興事業が本格化してきており、資金の援助は不可能で、新たに提供できる場所もない」と説明している。
同校近くの仮設住宅では同局以外の電波が入りにくく、放送を楽しみにしている住民も多い。仮設住宅で暮らしている無職、阿部たき子さん(72)は「町の人たちの会話が楽しく、毎日聞いている。何とか続けてほしい」と話している。【竹田直人】