東日本大震災の津波で全壊した宮城県内の住宅6万836戸のうち、国が所有者から土地を買い上げる移転事業の対象や、災害公営住宅(復興住宅)の入居想定に現段階で入っていない世帯が約3万戸に上ることが、県の試算でわかった。自力再建は困難と訴える被災者は多いが、財政基盤の弱い自治体は独自の支援策を打ち出すのは困難で、国の支援強化を求める声が上がっている。【宇多川はるか】
県によると、全壊世帯6万836戸のうち▽「防災集団移転促進事業」(防集)の対象は1万4500戸▽「がけ地近接等危険住宅移転事業」2150戸▽復興住宅1万4770戸--と、それぞれ市町の計画などをもとに推計。残る2万9416戸が自力再建を迫られると試算した。特に被害が甚大だった石巻市が、半数以上の約1万5000戸を占める。
自力再建の対象世帯でも、被災者生活再建支援法で1世帯当たり最大300万円の支援金が受けられる。しかし、防集対象世帯が自宅再建の際に受けられる土地の買い取りや、住宅ローンの利子補給(上限708万円)などの支援策はない。
一方、復興住宅の建設について県は当初(昨年12月)、仮設住宅入居者数や被災した市町からの要望を積み上げるなどした結果、約1万2000戸としていたが、経済的な理由などから自力再建をあきらめる被災者が増えていることを受けて今年4月、約3000戸を上乗せした。県幹部は「個別の支援がなければ、せっかく自力再建しようとした人が断念し、復興住宅を希望する世帯が更に増える」と懸念している。
被災自治体のうち比較的財政が豊かな仙台市は、4000世帯と試算される自力再建世帯に対し、防集対象世帯と同水準の利子補給をする独自支援策を行っている。しかし、石巻市や気仙沼市、南三陸町、女川町などは独自策を打ち出せず、国による財政支援を要望している。
ただ国は、個人資産の形成につながるとして、自治体による独自支援策への財政措置に難色を示しているのが実情だ。国による新制度創設は困難とみられるが、村井嘉浩(よしひろ)知事は復興交付金の市町村配分増加や使途自由度拡大など、国に特別な措置を求めている。