<東日本大震災>特需薄れ再建に暗雲…仮設商店街延長申請へ

宮城県や岩手県が復興特区を申請し、存続期間の延長を図ることになった仮設商店街。オープン当初は、東日本大震災の被災から立ち上がる象徴的存在として注目を集めたが、復興特需は徐々に薄れ「曲がり角」を迎えている。営業を継続できることになっても、本格的な再建に向けて資金をどう工面するのか。店主らの悩みは深い。
【仮設商店街】存続期間の延長求め特区申請へ 宮城・岩手
 ◇消えたにぎわい…岩手
 「昨年10月ごろまでは観光客やボランティアでにぎわっていたが、今では週末に観光バス1台が来る程度。これからどうやって集客したらいいのか」。岩手県大槌町の「福幸(ふっこう)きらり商店街」会長で衣料店を営む山崎繁さん(64)は頭を抱える。
 この商店街は2011年12月、校舎1階部分が津波で浸水した旧町立大槌北小学校のグラウンドにオープン。2階建てプレハブ店舗約40軒が並ぶ。昨夏のピーク時には1日10台の大型バスが訪れた。昨年5月から5カ月間は校舎が延べ2000人のボランティアの宿泊施設となり、商店街を潤した。
 だが、校舎は取り壊すため閉鎖され、観光客も減った。最も近い仮設住宅までは500メートルと遠い。洋菓子店を営む男性(52)は「売り上げはピーク時の3分の2に届けば良い方だ」と打ち明ける。津波で流されるまで店舗兼住宅があった旧町役場近くに再建したいが、町の計画で平均2メートルの盛り土が完了するのは早くても2年後。「それまで維持できるか」と漏らす。
 岩手県産業復興相談センターが昨年7月から同11月末に実施した仮設事業所への調査で、回答した407事業所のうち181事業所(44%)が、オープン直後より売り上げが「やや減少」または「大きく減少」と答えた。仮設商店街の周辺での大型店の本格復旧や、仮設店舗の目新しさの減少が影響しているとみられる。
 約30店舗がプレハブに入居する同県大船渡市の「おおふなと夢商店街」は昨年11月から月2、3回、商店街の事務所に商店主や行政職員、専門家らを集め、本格的な再建に向けた構想を練っている。市は被災した商店などの再建場所として、JR大船渡駅東側4.2ヘクタールを整備する計画。勉強会では、モール型の共同店舗や産直施設開設といった構想が上がっている。
 ただ、駅東側が津波で浸水したこともあり、資金面と合わせて、不安を募らせる商店主もいる。カフェ経営の下館博美(しもだてひろみ)さん(50)は高台に店舗兼住宅を建てたいが、土地探しが難航。住宅を併設できない共同店舗に入れば、家賃が二重に必要となる恐れがある。「駅東側は海の近くなので津波も不安。なかなか決められない」と話す。【金寿英】
 ◇まちの将来像見えず…宮城
 プレハブでの営業期限延長を求め、復興特区を申請する方針を固めた宮城県石巻市。中心部にある仮設商店街「石巻立町復興ふれあい商店街」(19店舗)のパン屋店主、谷地田(やちた)けい子さん(62)は威勢よく接客していたが、客足が途絶えると「2年目の今が一番不安」と顔を曇らせた。
 市の中心部にあった店舗は津波で壊滅状態となり、工場内にあった約4000万円相当の機械も流された。住宅ローンは残ったままだ。店を閉めようとも考えたが、客たちのエールに押されて再開を決意し、当座の資金を稼ごうと「わらにもすがる思い」で仮設商店街に入った。
 がむしゃらに店を続けてきたが、住民の合意形成ができず、まちの将来像は見えない。「復興して人が戻らなければ店は再建できない。自前で店を再建したい思いはあるんだけど……」。この商店街が存続期限を迎えるのは今年12月。特区申請で延長がかなえば、まちが復興するまで仮設で販売を続けたいと考えている。
 石巻商工会議所が1~2月に実施した同商店街への意向調査では14、15店が設置期間の延長を希望した。
 仮設店舗から自立する意欲を失いかけている店主もいる。同県女川町の女川高校グラウンドに設置された「きぼうのかね商店街」。文房具店経営の三浦清成さん(52)は商店街の復旧に合わせ店を再建するか迷っている。
 津波で子供2人を亡くし、自宅と店も失った。「再建には費用がかかるし、また流されるのではという不安もある。仮設にいる方が幸せではと考える時がある。10年くらいいたいぐらいだ」【宇多川はるか、宮城裕也】

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