東京電力が新総合特別事業計画(再建計画)で収益強化策の柱に位置づけた他電力管内での電力小売り事業(全国販売)について、東電とは別の新ブランドを設定する方針であることが8日、分かった。中部や関西地方など管外での電力供給に当たり、地域独占色が強く、福島第1原発事故で悪化した東電ブランドよりも、新ブランドで展開した方が顧客に受け入れられやすいと判断したと見られる。東電では2014年度に新ブランド名などを決めた上で社内組織を整備、営業活動を始める。
◇14年度から営業展開
東電は新再建計画で電力小売り事業について「全国で一定のシェアを確保する」と明記。当初は管外の自家発電設備を持つ工場などから電気を購入し供給力を確保した上、14年度中に新ブランドで企業など大口需要家向けに営業活動を始める。将来的には管外に火力発電所を新設することも検討している。家庭向けには、電気とガスを一体で買ってもらうことで料金が割安になるプランなどを提案していく。東電が全国販売参入を急ぐのは顧客拡大で収益を増やさなければ、福島第1原発事故処理の費用が確保できず、再建も進まないため。
ただ、今のように電力料金が大手電力の中で2番目に高い水準では競争力は乏しく顧客に受け入れられない。全国販売の実現には東電の発電コスト抑制に大きく影響する柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働の行方も焦点となりそうだ。【浜中慎哉】