<東電>火力を社内分社化…建設・運営で競争、8千億円削減

 東京電力は13年3月をめどに、火力発電所部門を独立採算の社内カンパニーに移行する。火力発電所の建設、運営会社は今後、入札で選び、火力カンパニーもガス、石油会社など外部企業と同じ条件で応札。どれだけ安く建設し、電力供給できるかを競わせ、火力発電所への投資額を10年間で約8000億円圧縮することを目指す。
 実質国有化に合わせて作った「総合特別事業計画」に基づく社内分社化の第1弾。火力部門の独立性を高めることで、身内に甘い「お手盛り入札」の批判も抑えたい考えだ。社内カンパニー制の本格導入は大手電力初で、近く発表する中期経営計画の骨子に盛り込む。
 現在の「火力部」「燃料部」のほか、発電所などに所属する、東電社員の約1割に当たる約3000人を異動させる。常務クラスを経営トップの「プレジデント」に充て、人事や予算執行など広範な権限を与える。
 東電は19~21年度に予定している計260万キロワット分の火力発電所新設にあたって入札を実施する。週明けに入札手続き開始を発表。13日に参加者向け説明会を開き、13年夏ごろに落札事業者を決める。入札にはガス、石油会社のほか、独立系の発電会社も関心を示している。火力カンパニーは商社、銀行などと組み資金調達力を高めた上で応札するが、落札できる保証はない。
 福島第1原発事故で火力発電への依存度が高まる一方、発電所建設には6、7年かかることから火力部門の改革を急ぐことにした。
 東電は13年4月には送配電、小売りの両部門も社内カンパニー化する方針。本社部門は、原発事故の被災者賠償、廃炉作業などのほか各カンパニーを統括する役割に絞り込む。【宮島寛、和田憲二】
 ◇社内カンパニー制◇
 予算や人事など広範な権限を社内の事業部門に与え、独立採算の子会社のように運用する仕組み。総合電機の日立製作所や東芝、住宅設備大手のリクシルなど、事業分野が多岐にわたる大企業での採用例が多い。各カンパニーは独自に投資判断を下せるため、意思決定が速くなるとされる。ただし社内の連携が悪くなるなどの副作用もあるとされ、ソニーなど一旦採用した社内カンパニー制を解消した企業もある。

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