宮城県気仙沼市の大島と本土を結ぶ気仙沼大島大橋の開通から7日で1カ月となった。島民の暮らしは改善し、島は開通特需に沸く。一方、観光地への誘導や駐車場の確保など観光客の受け入れ態勢に課題が残った。
島のスーパーに勤める本土の女性(59)は通勤時間が約30分も短縮した。午前7時に本土で仕入れ、そのまま船着き場に向かっていたが、今は一度自宅に戻る余裕がある。女性は「乗船料などの経費も減る。便利になった」とかみしめる。
緊急輸送路としての役割も大きい。気仙沼・本吉地域広域行政事務組合消防本部(気仙沼市)によると、開通後10日間で島から市立病院までの救急搬送は8件あり平均搬送時間は30分。救急艇を使っていた2017年の平均搬送時間(46分)より16分も早くなった。
観光面の効果は絶大だ。市が土日や大型連休中などに島内2カ所の駐車場から亀山(235メートル)まで走らせたシャトルバスの利用者は、運行した19日間で計1万1439人。昨年の大島全体の観光客数(9万3700人)の1割以上だ。
島の船着き場があった浦の浜地区にある「島の味処 こまつ」には大型連休中、午前11時の開店前から連日行列ができた。稼ぎ時のこの時期、昨年の約3倍の売り上げに。店長の小松睦さん(53)は「他の店も混雑したと聞く。開通効果は予想以上だ」と驚く。
一方、観光客からは渋滞や案内の不備に不満の声も上がった。家族旅行で来た千葉県流山市の公務員男性(49)は激しい渋滞に亀山行きを断念。「頂上近くの駐車場が満車と言われた。一番の観光名所なので行きたかった」と漏らした。
連休中は龍舞崎にある40台の駐車場も満車状態が続いたため、行き場を失う観光客の姿も見られた。仙台市太白区の会社員男性(53)は「島の観光情報が少ない。どこに行けばいいのか分からなかった」と話す。
島内に公衆トイレは約10カ所あるが大半は老朽化しているか仮設。トイレを借りに飲食店に駆け込む女性観光客もいたという。大島観光協会の白幡昇一会長は「今は橋が珍しくて来ている。リピーターを増やすためにはソフト面も含めた受け入れ環境の充実が必要」と話した。