<海水温>世界の主要5暖流で急上昇 国際チーム解析

黒潮やメキシコ湾流など世界の主要な5暖流の水温が、この100年間で海洋全体より2倍以上上昇していることを、中村尚東京大教授(気候力学)らの国際チームが突き止めた。暖流は、赤道付近の暖かい海水を中緯度海域に運び、熱を大気中に放出する。暖流の急速な水温上昇は、沿岸の漁業や気象にも影響しそうだ。成果は、英科学誌ネイチャー・クライメイトチェンジ3月号に掲載される。
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 国際チームは、船や人工衛星などによる海域の観測データを集約している日米欧など8研究機関の記録をもとに、1900~2008年の5暖流の水温や流量などを解析した。
 その結果、海洋全体の水温上昇は約1世紀で平均0.6度だったのに対し、黒潮、東オーストラリア海流、ブラジル海流は1.3度、アガラス海流は1.4度、メキシコ湾流は1度で、5暖流の平均上昇幅は海洋全体の2倍以上だった。
 上昇の原因として、20世紀に急速に進んだ地球温暖化の影響などが暖流により強く表れたと、チームは見ている。
 日本列島に沿って流れる黒潮は、この100年間で約50キロ北上、流量も増えていた。水温上昇は水深約400メートルにまで及び、100年間に蓄積した熱量が水面から放出されたと仮定すると、1平方メートルで5トンの氷を解かす規模に相当するという。
 中村教授は「水温上昇が、暖流でより大きく表れることが初めて分かった。黒潮などを観測することで、地球規模の変化をいち早く察知できる。また沿岸の異常気象の予測の精度向上にも役立つ」と話す。【田中泰義】

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