環境省が東日本大震災の復興支援としてルート設定を進めてきた長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」が9日、全線開通した。八戸市-相馬市の沿岸約1000キロのコースで、震災を語り継ぐ「記憶の道」を掲げる。
名取市文化会館での記念式典で、原田義昭環境相が「震災に負けず未来へ進む人々の笑顔に出会える道。復興とその先の未来につながっている」とあいさつ。村井嘉浩宮城県知事は「被災地の復興、発展を一層加速させる」と歓迎した。沿線自治体の首長や関係者ら約600人が出席した。
みちのく潮風トレイルは蕪島(八戸市)から松川浦(相馬市)まで青森、岩手、宮城、福島4県の28市町村を結び、全長1025キロ。環境省が2013年11月からルートを順次公表し、最後となった岩手県岩泉町、宮古市-岩手県山田町、石巻市、石巻市-仙台市の4区間計272キロが9日、正式発表された。
名取市の名取トレイルセンターが統括本部を担い、八戸市の種差海岸、岩手県田野畑村の北山崎、宮古市の浄土ケ浜、大船渡市の碁石海岸、南三陸町の5カ所に地域拠点を設置。各拠点で歩道の状況把握や利用者への情報発信に取り組む。
東北の太平洋沿岸で全線開通した長距離自然歩道「みちのく潮風トレイル」の魅力を探るシンポジウムが9日、名取市文化会館であった。登壇者からは「福島県南端のいわき市までルートを設定してほしい」などの声が出た。
進行役は北海道大観光学高等研究センターの木村宏特任教授が務め、みちのく潮風トレイルを踏破したタレントなすびさん(福島市出身)や、元環境省自然環境局長の渡辺綱男氏ら4人がパネル討論した。
なすびさんは全線を歩いた経験から「東北の人情を感じられるすてきな道だ」と強調。「福島県内は原発事故の影響で歩けない場所もあるが、いつかいわき市まで歩けるようになってほしい」と期待感を語った。
渡辺氏は東日本大震災の復興支援としてトレイル開通を後押ししたエピソードを紹介。「自分を見つめ直す道であり、被災者に対する祈りの道でもある。震災を乗り越えた人たちの思いを共感できることが大事だ」と述べた。このほか、「看板整備が追い付いていない。英語表記などが必要だ」などの意見もあった。
長距離自然歩道は欧米で「ロングトレイル」と呼ばれ、親しまれている。みちのく潮風トレイルの公式サイトで、沿線各地のルート情報やモデルコースを紹介している。