<瀬戸際の城下町>移住推進 活性化の鍵

任期満了に伴う宮城県白石市長選(10月23日投開票)は、ともに無所属新人の元市議、山田裕一氏(40)=自民・公明推薦=と沼倉昭仁氏(47)が一騎打ちを繰り広げている。かつて「仙南の雄」と称された拠点都市は人口も経済もやせ細って存在感が薄れ、今や瀬戸際に立つ。守りきれず、攻めあぐねる城下町を歩き、再生の鍵を探った。(白石支局・瀬川元章)

◎白石市長選10月23日投開票(上)人口減

午後8時すぎ、市中心部のアーケード街。店のシャッターが閉まり、週末でも人通りはほとんどない。こうこうと輝く照明がむなしさを誘う。
「子どもが遊ぶ姿を見掛けなくなった。商店街の背後に住み、『内需』を支えていた人も少なくなった」。通り沿いで印刷会社を営む山田吉訓さん(40)がため息をつく。

<乏しい危機感>
2002年の公立刈田総合病院の郊外移転、07年の地場スーパーの閉店で空洞化に拍車がかかった。往年のにぎわいを取り戻すのは、春まつりや夏まつりなど年数回に限られる。
「私で4代目だが、ここでは新参者」という山田さん。空き店舗や空き地が点在する街並みを眺め、「外から見ると寂れているが、中にいる人々に悲壮感がない」と首をかしげる。
別の商店主が重い口を開く。「経営者の高齢化が進み、年金暮らしで売り上げに頼る必要がない。暇だから店を開けているだけ」。危機感の乏しさは、過去の繁栄を知る老舗の諦めと重なる。
市は本年度、中心街にある空き店舗に出店する事業者に改装費を一部補助する制度を始めたが、実績はゼロ。商店主は「ネット注文で商品が翌日に届き、郊外の大型店でさえ撤退する時代。きちんと家賃を払える事業計画がなければ、貸す人はいない」と本音を明かした。
市の人口は現在、約3万5300人。3期12年で引退する風間康静市長は「4万人復活」を掲げたものの、この10年で1割強、約4300人減った。市教委は今春、周縁部の3小中学校を廃止し、中心部の大規模校に統合する方針を打ち出した。

<10年で3割増>
市全体が縮む中で、人口が増え続ける地区もある。
東北新幹線の白石蔵王駅に近い鷹巣地区。田畑が宅地に変わり、一戸建て住宅が次々と姿を現す。
人口は約2000人。10年前より3割増えた。子育て世帯を中心に、リタイア組の移住も目立つ。自治会長の佐藤昭さん(62)は「区画整理で道路や下水道が整備され、お店もある。旧市街地から離れているが、車があれば気にならない」と人気の理由を説明する。
防災訓練や盆踊り、餅つき大会といった活動も盛んで、まだ人口が増える余地がある。佐藤さんは「今が絶頂期かもしれないね」とつぶやいた。
市勢を盛り返すヒントは? 白石商工会議所会頭の斎藤昭さん(65)は「市外からの通勤者や観光客を考えれば、中心商店街で希望が持てるのは飲食業」と指摘。「新幹線や高速道路、歴史文化といった優位性を生かすのは、もはや企業誘致ではない。まちなかの居住環境を整備し、仙台圏に向けて移住定住を積極的にPRすべきだ」と提言する。

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