東日本大震災の被災者が暮らす宮城県石巻市の新沼田第1災害公営住宅(121戸)で、市が一度対策を講じた住居に再びカビが生えていたことが分かった。同 住宅は完成後にカビが発生し、市が清掃や建材交換をしていた。市は追加対応を検討するが、専門家は原因の特定と抜本的な対策の必要性を指摘する。
再びカビが生えたのは1階の樋口敏雄さん(66)方。7日に国立医薬品食品衛生研究所(東京)と秋田県立大(由利本荘市)の研究者が調べた際、畳の下の床板に青や黄色のカビを発見した。
市によると、同住宅では入居が始まった7月末以降、15戸で畳やふすまの床板にカビが確認された。6月末の完成検査時にはなかったという。
市は「完成が梅雨時期と重なったことなどに加え、引き渡しまで換気しなかったのが要因」と釈明。不手際を認め、8月に樋口さん方を含む住居の畳を交換、除菌もした。
樋口さんは市内の仮設住宅に入居後、ぜんそくを患った。病院で2014年5月、仮設住宅のカビが原因と診断され、治療を続けている。
樋口さんは「災害公営住宅に入ればカビはないと喜んでいた」と肩を落とす。災害公営住宅入居後は小まめに換気をし、除湿器や除湿剤を設置するなど気を付けていたという。
同研究所衛生微生物部第3室(真菌研究)の渡辺麻衣子室長は「建材に一度カビが生えると完全な除去はできないので、交換すべきだ。異常に生えている。市は 専門家の意見を聞き対応してほしい」と訴える。秋田県立大の長谷川兼一教授(建築環境学)は「原因を特定しないと再度発生する恐れがある」と指摘する。
市は樋口さん方でのカビの再発見を受け、職員を派遣して床下を確認。市は「大規模な改修なども含めて検討したい」と話す。