<特殊詐欺>宅配便や郵送で「送れ」急増 前年比50倍に

 社債や未公開株の購入などを持ちかけて現金をだまし取る特殊詐欺事件で、宅配便や郵送で現金を送らせる手口が、2012年は前年の18件から50倍近い815件に激増したことが、警察庁への取材で分かった。今年に入っても4月末現在、505件(暫定値)と増加傾向が続いている。金融機関は振り込め詐欺対策として、口座開設の条件を厳格化しており、一連の動きは詐欺グループが被害者と直接やり取りする手口に移行している実態をうかがわせている。
 奈良県警によると、同県の70代男性の自宅に今年1~4月、「過去に購入した社債の配当を再開するので、手続き料を送ってほしい」との電話があり、品名に「書類」と記したシールを貼ったレターパックが送られて来たので、男性は現金を入れ返送したという。被害金額は11回で計約3000万円に上った。
 また、同県の60代女性は4月、電話で架空会社の社債購入を勧められ、「現金を新聞紙で包み、品名を『本・書籍』と書いて宅配便で送って」との指示に従い、500万円をだまし取られたという。
 国民生活センターは3月、ホームページで「宅配便を使って金銭を送付させる手口が目立っている」と注意を促し、レターパックを扱う日本郵便は伝票の品名部分などに「現金を送ることはできません」と明示。大手宅配業者「佐川急便」(本社・京都市)も昨年12月の社内報で、宅配便利用詐欺の注意情報を流した。
 同社によると1月に北海道で、ドライバーが集荷先で客の言動に不審を抱き、「中身を確認することがある」と伝えると、現金を送ろうとしていたことが判明し、警察に通報したケースがあったという。
 奈良県警生活安全部は「宅配便や書留以外の郵便では現金は送れない。指示をされても絶対に耳を貸さないで」と呼び掛けている。【村本聡】
 村千鶴子・東京経済大教授(消費者法)の話 宅配便で現金を送ってはいけないことを知らないか、知っていても無視して送ってしまう人が多い現状が詐欺グループに広まり、被害が激増しているのではないか。高齢者が出入りする病院や福祉施設などとも連携し、注意を地道に呼び掛けることが大切だ。

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