<目指せ外国人誘致>アジア照準 招待ツアー

◎招くTOHOKU(上)売り込む

日本を訪れる外国人観光客がかつてないほど増えている。ことしは11月までで約1796万人が入国 し、過去最高だった昨年1年間の約1341万人を突破した。ただ「爆買い」に代表される経済効果は東北には及んでいない。東北に外国人観光客を招き、ビジ ネスや地域活性化に生かしていこう。誘客を目指す動きを追った。(報道部・奥山優紀)

<自然や文化体験>
「東北の自然や伝統文化を体験する企画は好まれるし、教育旅行にも向いている」。マレーシアの旅行会社に勤務するリュウ・モイコンさん(56)は笑顔を見せた。
東北運輸局と東北観光推進機構が今月中旬、東南アジアの旅行会社の社員らを対象に実施した東北巡りツアー。モイコンさんは北東北3県と宮城のモデルコースに参加し、きりたんぽ作りや金魚ねぷた作り、猊鼻渓舟下りなどの体験型イベントを満喫した。
マレーシアでは、アジア旅行の行き先の8割を日本が占めるという。その多くは東京、京都、大阪を回る「ゴールデンルート」や、雪目当ての客が増えている北 海道。モイコンさんは「東北はもっと文化や自然の魅力をPRすべきだ。雪を見たいという需要もまだまだある」と助言した。
急激に増える訪日外国人観光客のうち、東北に足を伸ばすのはわずかしかいない。観光庁によると、ことし1~9月に国内に宿泊した外国人観光客数は延べ約4535万8000人。このうち東北は34万1000人で0.7%にとどまる。
全国と比べてあまりにも低い水準に、東北各県や自治体、東北観光推進機構などが海外から旅行会社やメディアを招くツアーを実施。東北を売り込もうと躍起になっている。
東北運輸局は「外国人観光客は消費単価が高い。外貨を落としてもらい地域経済が活性化すれば、新たな雇用も生まれる」と重要性を訴える。

<広域連携で事業>
民間主導の広域連携で誘客を図る動きも出てきた。
東北の宿泊・観光業者など約50社が9月に設立した「みちのくインバウンド推進協議会」(酒田市)。会長を務めるホテルリッチ&ガーデン酒田(同)の熊谷芳則社長(58)は「危機感を抱いていた。交流人口を増やさないと地方は立ち行かなくなる」と設立の理由を説明する。
親日派が多く、訪日客数が増えているタイにターゲットを絞った事業展開を計画する。11月下旬には現地の旅行会社社長を招き、秋田、岩手などを巡るモデルツアーを実施した。
旅行商品をつくってもらい、タイから一般客が訪れるようにするのが狙い。来春以降にもタイのメディアなどを招いたツアーを組む予定だ。
2020年の東京五輪も視野に入れる。熊谷社長は「世界中から外国人が集まる。地方にとって最大のチャンス。五輪に合わせて東北を訪れ、宿泊してもらうような構図をつくりたい」と意気込む。

タイトルとURLをコピーしました