仙台市宮城野区の仙台港に建設中の石炭火力発電所「仙台パワーステーション(PS)」を巡り、市民らが説明会の開催を求めている。仙台PSは出力が基準をわずかに下回るため国の環境影響評価(アセスメント)の実施対象外だが、市民側は大気汚染物質の環境への影響が公的にチェックされないままの稼働を懸念。「説明責任を果たすべきだ」と指摘するが、事業者側は開催に応じていない。
仙台PSは同名の特別目的会社が2015年9月に着工し、17年10月の営業運転開始を計画する。関西電力の子会社関電エネルギーソリューション(大阪市)と、伊藤忠エネクスの子会社エネクス電力(東京都港区)が共同出資した。
出力は11万2000キロワット。環境アセスの実施基準(11万2500キロワット以上)をわずかに下回る。仙台市は電力自由化に伴う小規模発電所の増加を考慮し、市独自の環境アセスの対象に火力発電(3万キロワット以上)を加える条例改正を5月に施行したが、着工済みの仙台PSは対象にはなっていない。
仙台PSは3月、県公害防止条例に基づき、県や市などと協定を締結。汚染物質の排出濃度を硫黄酸化物(SOx)と窒素酸化物(NOx)がそれぞれ100ppm、ばいじん濃度を1立方メートル当たり50ミリグラムに定めた。いずれも国の基準値を下回る。ただ、環境アセスと異なり、協定締結に当たって第三者が意見を述べる機会がない。
学識経験者や仙台市内の主婦ら約10人は昨年8月から説明会を開くよう仙台PSなどに要請。事業者側は今年8月末に初めて回答したが、説明会ではなく文書で対応する考えを示した。
説明会開催を申し入れた若林区の主婦諸岡浩子さん(50)は「健康被害を心配する市民に開かれた場で説明してほしい」と訴える。メンバーの中には、南約1キロにある蒲生干潟への影響を懸念する声や二酸化炭素を多く排出する石炭火力の新設そのものに慎重な意見もある。
東北大東北アジア研究センターの明日香寿川教授(環境エネルギー政策)は、燃焼や公害防止の高効率化が進む大規模発電所と比べ、小規模で技術方式が旧式の発電所は汚染物質の排出が多いと指摘。「国内ではアセス対象すれすれの発電所計画が多いが、地域への説明は企業の社会的責任だ」と強調する。
伊藤忠エネクスIR広報課は取材に対し、「同規模では最新鋭の機器で厳しい基準をクリアしている。疑問点には書面で対応する」と説明。仙台市環境対策課は「事業者は市民の不安に対応してほしい。今後の推移を見守る」と話す。