<米・ナバホ自治区>肥満防止…全米初「ジャンクフード税」

◇ファストフードなど対象に5%の売上税に2%上乗せ

【ロサンゼルス長野宏美】米西部アリゾナ州など3州にまたがる先住民居留地ナバホ自治区で今月から、炭酸飲料やスナック菓子などに課税する全米初の「ジャンクフード税」が導入された。肥満や糖尿病を防ぐのが狙いで、他の都市への影響が注目される。

新税は塩分や油脂の多い揚げ物やファストフード、脂肪分が高い肉の缶詰などが対象。5%の売上税(一部地域を除く)に2%上乗せする。昨年10月には健康的な食品の購入を促すため野菜や果物への課税を取りやめた。

背景には、他の都市よりも多い糖尿病患者の割合や貧困率、生鮮食料品店の少なさがある。

自治政府の2013~14年の調査によると、住民の11.2%は糖尿病(11年の全米平均6.9%)。10年の貧困率は38%(13年の全米平均14.5%)に上る。九州の約2倍の面積に生鮮食品がそろう大型スーパーは10店しかない。

米農務省は自治区のほぼ全域を生鮮食品店へのアクセスが悪く、低所得者が多く住む「食の砂漠」に分類。安くて手軽なファストフードなどに依存する社会構造が肥満につながっている様子が浮かび上がる。

新税の導入を働きかけた市民団体「DCAA」のデニサ・リビングストンさん(33)は「健康問題への意識を高め、『食の砂漠』から『食のオアシス』に変える必要がある」と訴える。

自治政府はジャンクフードへの課税で食習慣を改善するとともに、税収をスイミングプールの建設や野菜の栽培、食育などに充てる方針。法案を提出したジョナ サン・ネズ議員は「税金をコミュニティーに還元し、より新鮮な食べ物を手に入れやすくしたい。(生活様式の変化は)医療費の削減にもつながる」と期待す る。

米国ではこれまでも肥満対策で飲料に課税する動きはあった。AP通信によると、今年1月、米カリフォルニア州バークリー市が住民投票 で糖分入り飲料に課税する「ソーダ税」を米国の都市で初めて導入。一方、30以上の都市で同様の税が検討されたが、飲料業界の反発などで成功しなかった。 ニューヨーク市も昨年、販売規制をめぐる訴訟で敗訴した。

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