甘利明経済再生担当相は25日の閣議で、2014年度の経済財政報告(経済財政白書)を提出した。日本経済の課題として、構造的な人手不足問題を初めて本格的に取り上げ、女性と高齢者の就労促進を提言。子育て対策の強化で女性の就労を100万人増やせると試算した。賃上げの必要性にも言及し、雇用重視の姿勢を鮮明にした。
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少子高齢化が進んで働き手が減ると、国民全体の所得が減り、消費や生産力が落ちる。白書は30年の労働力人口が現在より890万人以上少ない5683万人に減少するとの試算に触れ、「所得を押し下げ、潜在成長率の低下をもたらす可能性もある」と警告した。経済が右肩下がりになって社会保障などにしわ寄せを生じさせないためにも「女性と高齢者の労働参加を促進することが重要」と指摘。子育て対策の強化で女性の就労を約100万人増やせるとした。
最近の景気に関しては「デフレ脱却に向けて着実に前進している」と強調。企業収益の回復で時間当たり給与が13年後半から上昇傾向にあることを踏まえ、「雇用・所得環境は着実に改善している」と評価した。ただ、原材料価格などの高止まりで物価が上昇する中、賃金も増えないと、消費を下押しする。白書は自律的な景気回復のためにも「持続的に賃金が上昇していくことが重要」と訴えた。
企業が競争力を高めて賃金に還元するために、「労働生産性の向上を図る必要がある」と指摘。この点で日本の労働市場は「主要先進国に比べてやや硬直的」と分析し、雇用慣行の見直しを求めた。具体的には、労働時間規制を見直して、時間ではなく成果で評価する仕組みを整えたり、業績が低迷している分野から成長分野に労働者を移転させるために雇用の流動性を高めたりする対策が必要としている。法人税改革の必要性にも改めて言及した。
一方、4月の消費増税前の駆け込み需要を2.5兆~3兆円程度と推計し、1997年の増税時の2兆円程度をやや上回ったと分析。その分、増税後の反動減も大きくなる可能性を指摘した。ただ、景気の先行きについては、設備投資の増加や賃上げ、政府の経済対策などを背景に「反動減の影響が次第に薄れ、全体として緩やかに回復していく」と自信を示した。【小倉祥徳】