<絶滅危惧種>太平洋クロマグロを指定 IUCN

 ◇カラスフグとアメリカウナギも
 国際自然保護連合(IUCN)は17日、絶滅の恐れのある生き物を掲載した最新のレッドリストを公表し、すしなどに使われる太平洋クロマグロを絶滅危惧種に指定した。漁獲禁止などの法的拘束力はないものの、世界最大の消費国である日本は保護策の強化を迫られそうだ。日本人の食と関係が深いカラスフグとアメリカウナギも絶滅危惧種に分類された。
 IUCNは、これまで太平洋クロマグロを絶滅の恐れが小さい「軽度懸念」に分類していたが、再評価の結果、絶滅危惧種の中で3番目にリスクが高い「絶滅危惧2類」に引き上げた。背景として「アジアに集中するすしや刺し身のための漁業」を挙げ、未成魚で捕獲されて繁殖の機会が奪われたことによって、過去22年で19~33%も減ったと推定した。ブルース・コレット・マグロ類専門家グループ部会長は発表文で「(日本が主な漁場とする)中西部太平洋で保護を進めなければ、短期的な状況の改善は望めない」と警告した。
 水産庁によると、太平洋クロマグロの親魚(4歳以上)の資源量は1961年に推定14万トンあったが、2012年は同2・6万トンに減り、過去最低だった84年の1.9万トンに近付いている。漁獲量の約9割は30キロ未満の未成魚で、このうち日本が6割、メキシコが3割、韓国が1割を占める。
 レッドリストは絶滅の恐れのある野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の対象種を決める判断材料となる。16年に南アフリカで開かれる同条約締約国会議で、これらの種を規制対象とすべきか議論される可能性がある。
 IUCNはさらに、高級魚トラフグの代用として国内の専門店などで流通するカラスフグを「乱獲により過去40年で99.99%減った」として、絶滅リスクが最も高い「絶滅危惧1A類」に指定した。また、6月に初めて絶滅危惧種入りしたニホンウナギの代用として日本に輸入されているアメリカウナギも、ニホンウナギと同じ「絶滅危惧1B類」に分類した。いずれも日本人の食生活や日本向け漁業の影響が大きいと考えられる。【阿部周一】
 ◇国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト
 絶滅の危機にひんする動植物の一覧。専門家が複数で評価し、保護の必要性に応じて、既に絶滅した種、絶滅危惧種、準絶滅危惧種、軽度懸念、情報不足に分類する。絶滅危惧種は、リスクの高い順に▽1A類(ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高い)▽1B類(近い将来に野生での絶滅の危険性が高い)▽2類(絶滅の危険が増大している)--に分かれる。最新レッドリストでは、これまで評価した7万6199種の29%に当たる2万2413種が絶滅危惧種として掲載された。

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