<自殺率>18年、秋田県ワースト返上 全国計2万人、9年連続減

2018年の自殺者数は17年より723人少ない2万598人(3.4%減)で、9年連続で減少したことが18日、警察庁の集計(速報値)で分かった。人口10万人当たりの自殺者数(自殺死亡率)は0.5人改善の16.3人で1978年の統計開始以来、最少となった。都道府県別の自殺死亡率は17年にワーストだった秋田が3.9人減の20.7人で全国6位となり、大幅に改善した。

 速報値によると、男性は1万4125人(17年比701人減)、女性は6473人(同22人減)。自殺者数が2万1千人を下回るのは37年ぶり。
 18年1~11月のデータを分析すると、50代(3225人、前年同期比91人減)と40代(3222人、同220人減)が多く、60代(2811人、同312人減)が続く。未成年は男性が35人減ったものの、女性が51人増えたため、前年同期比16人増の543人(男性331人、女性212人)だった。
 原因・動機は健康問題(9450人)が最も多く、経済・生活問題(3118人)が続いた。未成年では学校問題(169人)が最多だった。
 自殺者数は33道府県で減少し、13都府県で増加。東北では福島を除いて昨年より減少した。全国最多は東京の2248人。大阪など5府県でも千人を超えた。最少は鳥取の79人。
 自殺死亡率は、山梨(24.8人)、青森(22.0人)、和歌山(21.5人)、岩手(21.4人)、新潟(21.1人)、秋田(20.7人)、福島(20.6人)の順で高かった。
 東北ではこのほか、山形(18.1人)、宮城(16.9人)だった。東北6県は、いずれも全国平均(16.3人)を上回った。
 年間の自殺者は97年までは2万人台で推移したが、98年から14年連続で3万人を超えた。最多は03年の3万4427人。最少は81年の2万434人。
 政府は2017年の自殺総合対策大綱で自殺死亡率を米国やドイツの水準に並ぶ13.0人以下にする目標を掲げている。
 データを分析した厚生労働省自殺対策推進室は「景気回復や地域の取り組みで減少しているが、2万人超の現実を受け止め、対策を進める」としている。

◎官民連携 地道な活動実る

 警察庁が集計(速報値)した2018年の自殺死亡率によると、秋田県は全国6位の20.7人で、17年までの全国ワーストを返上した。自殺者数は206人で、17年比39人減と大きく減った。自殺防止に取り組む県内の関係者は、民間団体と医療機関、大学、行政が連携する「秋田モデル」の効果を挙げ、「地道な活動が実を結んだ」と強調した。
 17年の自殺者数は245人で、自殺死亡率は24.6人だった。この年も全国ワーストだったが、県民運動として対策に取り組んできた結果、ピークだった03年の559人から半減させた。
 県内では、3年ほど前から、悩みを抱える人をいち早く専門の相談機関につなげる「ゲートキーパー」の養成に力を入れている。
 秋田市のNPO法人「蜘蛛(くも)の糸」の佐藤久男理事長は「ゲートキーパーがいることで、身近で悩む人に手を差し伸べられる」と指摘。自殺死亡率の改善に「ゲートキーパーの活動の裾野が広がった効果もある」との見方を示した。
 県が17年度に策定した自殺対策計画は、自殺者の多い子どもや若者、高齢者らへの個別の対策を盛り込んだ。県保健・疾病対策課の担当者は「自殺死亡率が下がったとはいえ、依然、数値は高い。取り組みを継続させ、この流れを止めないようにしたい」と気を引き締めた。

[警察庁の自殺統計]警察は変死者の死因を調べるなどして自殺と判断すれば、職業や自殺の手段を自殺統計原票に記録している。警察庁は原票を集計し、月別統計を速報値で発表、動機や職業で分類した年間データを3月ごろ公表する。統計には国内で自殺した外国人も含まれることなどから、日本人だけを対象としている厚生労働省の人口動態統計とは数字が異なる。

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