火山活動が活発化している宮城、山形県境の蔵王山(蔵王連峰)の山頂付近で携帯電話がつながりにくいことに、両県の防災担当者から懸念の声が出ている。緊急時に自治体が出すエリアメールも登山者らに届かない恐れがあるが、法規制もあって新たな基地局整備は容易ではない。
「対策が必要だ」。10月31日に宮城県庁であった「蔵王山火山防災連絡会議」の第1回実務者会議。宮城県の担当者が指摘すると、出席者の多くが関心を示した。
国定公園の蔵王山は自然公園法に基づき、工作物の設置が規制されている。携帯電話の基地局も県の許可がないと設置できない。携帯大手3社はいずれも、離れた場所に設けた基地局で登山者の通話に対応している。
NTTドコモは、山頂から20~30キロの両県内に蔵王山専用の基地局を置く。「通話が可能な登山道もあるが、刈田岳から熊野神社にかけての山頂付近は所々で途切れることがある」と東北支社の担当者は語る。
ソフトバンクモバイルとKDDIは、ともに頂上から数キロに基地局を構える。両社は「基地局は通常、高い位置のアンテナから携帯の電波を捉える。山の頂上では、どうしても通話困難な場合がある」と説明する。
蔵王山の防災対策では宮城県が10月、避難小屋にヘルメットなどを配備している。携帯各社からは「避難小屋に電源があれば、小型機材を置くことで狭いエリアをカバーできる」(ドコモ東北支社)との声も上がる。
ただ、山頂で携帯電話がつながりにくいのは全国の山に共通の課題。宮城県危機対策課は「携帯各社への聞き取りなどをした上で、対策が取れるか見極めたい」と話す。