<蔵王山>火山活動余波 山形のホテル廃業

宮城、山形両県にまたがる蔵王山(蔵王連峰)の火山活動活発化に伴い昨年秋から宿泊客が激減したとして、山形市の蔵王温泉にある中堅ホテル「スターライト ホテル 樹氷の家」が、5月の廃業を決めたことが16日分かった。地元観光業者によると、火山活動による影響で蔵王温泉の宿泊施設が閉鎖されるのは初めて という。

樹氷の家は温泉街から離れたスキー場中腹にあり、1957年に開業した。5階建て全79室に、最大で350人が宿泊できる。「ゲレンデの中にあるホテル」が売りで、収容人数や立地の良さから修学旅行やスキー教室といった教育旅行の団体が主な客層だった。
樹氷の家によると、「お釜」の水面が白濁するなど火山活動の情報が広まった昨年10月以降、宿泊客が激減した。降雪後も傾向は変わらず、毎年予約が入っていた常連団体の利用見合わせ、キャンセルが相次ぎ、今季の売り上げは昨季の半分を割り込んだという。
東日本大震災の影響が薄れて客足が戻りつつあり、今季は畳を入れ替え、布団などを新調したばかりだった。武田義和支配人(55)は「これから新たな出発だ と思った直後の出来事。いつ事態が収束するか分からないまま、客のいないホテルを動かし続けるわけにはいかない」と唇をかむ。
廃業は火口周辺警報(火口周辺危険)が出された13日以前に決めた。大型連休後の5月にホテルを閉める予定で、創業時からロビーに置いていたグランドピアノの解体も始めた。
近くのホテル経営者は「団体客メーンの宿だけに、打撃が大きかったのだろう。警報後、うちでもキャンセルが相次ぎ人ごとではない」と表情を曇らせる。
警報の警戒範囲は想定火口域の周囲1.2キロで、温泉街はさらに4、5キロほど離れている。蔵王温泉観光協会の伊藤八右衛門会長(66)は「観光客の安全確保には万全を期している。どうすれば正確な情報を伝えられるのか、知恵を絞りたい」と話している。

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