火口周辺警報が出された蔵王山の噴火に備え、宮城、山形両県の周辺自治体が避難計画の策定を迫られている。融雪型火山泥流や降灰が想定される6市町は被害 が及ぶ地域を特定し、具体的な避難手段などを検討する。だが、蔵王山麓は東北を代表する観光地でもあり、観光客の誘導や避難所確保、食料備蓄など課題は山 積している。
宮城県蔵王町は、年間80万人の観光客が来訪する遠刈田地区の安全確保を重視する。東北地方整備局などが示した被害想定案によると、火口湖「お釜」から約11キロの温泉街には45分で融雪型火山泥流が到達する。
町は避難所として遠刈田小中の2カ所を指定。避難経路入りのマップ作成を進める。町総務課は「住民と観光客をいち早く避難所に誘導する」と言うが、現時点で水やマスク、ゴーグルなどの備蓄はない。
蔵王温泉を抱える山形市も観光客に注意を払う。地元中学校など2カ所を避難所に指定し、ホテルや観光業者の協力を得てバスによる避難を想定する。市防災対策課は「ホテルやロープウエー駅舎を一時避難所にする必要もある」と語る。
融雪型火山泥流が及ぶと想定される上山市は、まずは避難規模の確定作業を急ぐ。「避難人数に応じて収容先を確保しなければならない」と説明する。
宮城県川崎町は青根温泉の降灰被害を想定。基本は屋内待避で、建物倒壊の恐れがある場合は旧前川小青根分校に避難させる。校庭を緊急ヘリポートに利用すれば、けが人搬送も可能だ。
お釜から最も近い居住地の横川、長老両地区で1センチ以上の降灰が予想される宮城県七ケ宿町。被害程度に応じた1次、2次の避難所を確保する計画で、6月12日には両地区を主会場に避難訓練を実施する。
白石市も降灰に備えた計画を早急に策定する。お釜から約10キロの4地区を対象に総合福祉センターや中央公民館に住民らを誘導する。市生活環境課は「自宅待機と屋外避難のどちらがいいか、降灰量次第で判断が分かれる」と話す。