<農地バンク>企業、規模拡大に意欲

安倍晋三政権が生産調整(減反)の廃止方針とともに打ち出し、農政改革の目玉として昨春スタートした農地バンク。東北をはじめ全国的に貸借実績は停滞気 味だが、農業の「担い手」を目指す企業が仕組みを利用して規模拡大を図る意欲は旺盛だ。コメ生産に新規参入する動きも出始めた。
仙台市宮城野区のイベントホールで1月21日にあった「農業参入フェアin仙台」。セミナーでは酒造業一ノ蔵(大崎市)の幹部が、2005年から取り組む酒米生産と今後の展開を説明した。
2ヘクタールで作付けを始め、14年は7.5ヘクタールにまで拡大した。年間に使う原料米は約2000トン、面積換算なら350~400ヘクタールもの規模で、まだまだ拡大の余地がある。三浦博光執行役員は「もっと多く農地を借りてコメを作りたい」と強調した。
作付けしている水田は直線距離で最長10キロ以上離れて点在する。同社は本年度、農地バンクの借り受け希望に応募し、大崎市の3区域で計15ヘクタールを申し込んだ。「高齢化する地域農業の新たな担い手になりたい」と三浦氏は意気込む。
安倍政権は、減反の廃止方針や農地集積の加速に続き、組織体制を見直す農協改革案を打ち出すなど、農業の成長産業化を目指す姿勢を鮮明にしている。流れに乗るように、全国では異業種からの参入も進みつつある。
イオングループのイオンアグリ創造(千葉市)は農地バンクを通じて埼玉県羽生市内の農地11ヘクタールを借り受け、コメ生産に乗りだす。同社と市は昨年12月19日、農業振興の協定を締結した。
同社は10年に「埼玉羽生農場」を開設し、キャベツやハクサイなどを栽培。今春、県のブランド米「彩のかがやき」の作付けを始め、系列店舗での販売を計画する。
コメ参入には地元からの要望もあった。締結式で河田晃明市長は「耕作放棄地の拡大や担い手不足を憂慮していた。地域農業を支えてほしい」と歓迎。県農林公社の前田敏之理事長は「民間企業参入のモデル事例として県内全域に展開を図りたい」と期待を寄せた。
イオンアグリ創造は羽生市のほか、花巻市など全国17カ所に直営農場を持つ。福永庸明社長は「ビジネスモデル確立に向け、100ヘクタール規模への拡大を目指す。将来的には東北でのコメ生産も検討したい」と話した。

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