<都市ガス>導管事業を分離…大手3社義務化、政府検討

政府は28日、2017年の都市ガスの小売り全面自由化に続き、19~21年をめどに東京、大阪、東邦の都市ガス大手3社に対し、ガス導管事業を別会社化する「法的分離」を義務づける方向で検討に入った。政府の電力システム改革では18~20年をめどに電力会社の送配電事業を別会社化する方針。都市ガス大手にも同様の措置を求め、ガス導管を新規参入者が公平に利用できるようにする。来年の通常国会に提出する関連法案に盛り込みたい考え。
 ◇17年に小売り自由化
 政府は17年に家庭用を含む都市ガスの小売りを全面自由化し、都市ガス事業者がそれぞれの営業区域で独占していた家庭向け販売を解禁する。自由競争による都市ガス料金の抑制が期待できるほか、消費者はガス料金や「電力とガスのセット割引」などのサービスを比較してガス会社を自由に選択できるようになる。
 都市ガス大手は、液化天然ガス(LNG)から都市ガスを製造し、地下に埋設されたガス導管を通じて工場や家庭に供給している。東京、大阪、東邦の大手3社については、ガス導管を敷設・管理する事業を、ガス製造や小売事業と分離、別会社化することを義務づける。
 複数の事業者が同じ地域にガス導管を敷設すると導管が二重になるなど非効率になるため、ガス導管は現行制度と同じ地域独占を継続。新規参入事業者は、ガス導管の利用料(託送料)を支払って消費者にガスを供給する。しかし、利用料が割高に設定されると新規参入の障壁となるため、利用料金は認可制として国がチェックする。
 一方、政府の電力システム改革では、18~20年をめどに電力会社の送配電事業を別会社化する「発送電分離」を行い、送配電網を発電・小売事業者が公平に利用できるようにする方針。00年以降、工場など大口市場は自由化されたが、新規参入者のシェアが約4%にとどまっているためだ。都市ガスは自由化部門の新規参入シェアが約15%に達し、電力より競争が進んでいるが、政府は電力と同様にガス導管の別会社化を義務づけたい考え。
 ただし、全国に約200社ある都市ガス事業者のうち8割が、従業員100人以下の中小企業で、別会社化に伴う事務コストが経営負担になる懸念がある。このため、政府はガス導管の別会社化の対象を、都市ガスの販売シェアの7割を占める東京、大阪、東邦の大手3社に限定する方針だ。【中井正裕】
 ◇法的分離◇
 政府が進める電力システム改革や都市ガス改革で、電気・ガスに参入する事業者の共通インフラとなる送配電網やガス導管を、すべての事業者が公平に利用するための手法の一つ。手法には、ガス導管事業と他の事業の会計を別にする「会計分離」、ガス導管事業を別会社にする「法的分離」、ガス導管の運用を第三者組織が行う「機能分離」、ガス導管の資本関係を完全に分離する「所有権分離」--の4類型がある。ガス生産・販売と導管事業を同一事業者が行う「会計分離」はガスの安定供給に最も適しているが、最も中立性が高いのは「所有権分離」だ。「法的分離」は中立性の確保と、安定的な運用の両面を一定程度満たす方法と位置づけられている。

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