日々の食事で多様な品目の食品をバランスよく食べている人は、そうではない人に比べ、認知症につながる認知機能が低下する危険性が約4割低いことが、国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)の調査で分かった。多様な栄養素や食に関する行動が、脳に好影響を与えている可能性があるという。日本老年医学会英文誌に発表した。
同センターの大塚礼室長(栄養疫学)らは、大府市と同県東浦町に住む60歳以上の約1200人を対象に、30点満点の認知機能検査を2000年から12年にかけて複数回実施した。そのうち初回が28点以上だった60~81歳の570人について、連続3日間の食事の献立調査を実施。穀類や野菜、肉などの食品摂取量から食事の多様性を数値化した。
食事の多様性の数値が高い順に4グループに分け、認知機能検査の2回目以降の点数との関係を調べた。その結果、食事の多様性が高いグループほど認知機能検査の点数が下がりにくい傾向が見られた。食事の多様性の数値が最も高いグループは、最も低いグループよりも認知機能が低下する危険性が44%低くなった。
大塚室長は「脳の認知機能は、多様な栄養素によって維持されていると考えられる。また、バランスのよい食事をとるには、買い物や調理などの準備も必要で、そうした行動も脳によい影響を与えているのだろう」と話す。【野田武】