<長町-利府活断層>地盤隆起し地下ダム機能

宮城県村田町から仙台市街地を横切り利府町に延びる活断層「長町-利府線断層帯」の活動で地盤が隆起した結果、地下のくぼ地にダムのように水がたまり、江戸期の仙台城下町は湧水や井戸水に恵まれていた、とのメカニズムを仙台市の民間団体「仙台・水の文化史研究会」が24日までに突き止めた。本来は水を得にくい台地に地下ダム機能があったため街の発展につながったと分析している。
研究会の柴田尚会長らは2013年から、同断層帯と江戸期の湧水15カ所の関係を文献や現地確認で調査。断層帯の隆起部の北西側に湧水が分布していた可能性が高いことが判明した。
市や地質調査会社のボーリング調査を基に地下構造を分析した結果、地下10メートルより浅い地層で、水を通しにくい凝灰岩や堆積岩が断層帯に沿って最大約7メートル隆起していることも分かった。浸透性の高い上部の砂れき層に水がたまり、地下でダムのようになっていたとみられる。
江戸期には広瀬川上流から城下町に引水した「四ツ谷用水」を流れる水や雨水が地下に浸透し、北西から南東方向へと流れていた。砂れき層の規模などから、地下の帯水層の保水能力は、大倉ダム(青葉区)の約6割に相当する約1560万トン規模と推定される。
明治以降は四ツ谷用水からの供給が途絶えて地面も舗装され、多くの湧水や井戸水が枯れた。柴田会長は「地下に豊かな水をたたえた仙台は過去のものだ。防災上の利点もあり、四ツ谷用水の復活などで水の都を取り戻したい」と語る。
同会は研究成果をまとめた論文を土木学会に提出する準備を進めている。東北大大学院工学研究科の西村修教授(環境生態工学)は「断層の運動で地下に山と谷ができ、湧水を生み出すメカニズムが判明したのは学問的に価値が高い。模型やコンピューターグラフィックスで立体的に示すことができれば分かりやすく説明できる」と助言する。
同会は1990年に発足し、四ツ谷用水や湧水の調査を続けている。四ツ谷用水は本年度、土木学会の選奨土木遺産に認定された。

[長町-利府線断層帯]過去4万~5万年に少なくとも3回活動したと推定される。平均して1000年に50~70センチ上下方向にずれが生じる。政府の地震調査研究推進本部によると、地震発生の可能性は30年以内に1%以下で、規模はマグニチュード(M)7.0~7.5程度と予想される。

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