<隠れ視聴率>ドラマ、録画で底上げ 再生でCM飛ばす?

10月に始まった民放新作ドラマの3本の視聴率が20%超、NHK大河ドラマ「真田丸」も20%を超え--。実はこれ、ビデオリサーチが今月公表した、録画視聴を加味した「総合視聴率」の数字。視聴率はこれまで、放送と同時に見た割合を示す「リアルタイム視聴率」だけが公表されてきたが、“隠れ視聴率”とも言える録画視聴率を含めたランキングはいかに。【丸山進】

ビデオリサーチは10月3日から、関東地区の900世帯を対象に、リアルタイム視聴率に加え、録画を7日以内に視聴した割合「タイムシフト視聴率(録画再生率)」の調査を始めた。両方を足して重複を除いた新たな指標が「総合視聴率」だ。

10月3~30日の間の総合視聴率と録画再生率のそれぞれのランキングを見ると、総合視聴率首位は、テレビ朝日「ドクターX」の初回(13日放送分)で28.3%。リアルタイム視聴率では日本シリーズ第6戦に負けたが、録画と合わせるとトップに。近年、大ヒット作が少ないと指摘される民放の新作連続ドラマも、TBS「逃げるは恥だが役に立つ」(25日同)、日本テレビ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(5日同)、TBS「IQ246 華麗なる事件簿」(16日同)の3本がそれぞれ20%を超えた。

録画再生率が高いのは主にドラマとアニメ。録画再生率首位の「逃げるは恥だが役に立つ」(25日同)は13.7%で、リアルタイム視聴率12.5%を上回った。逆転現象はアニメでも見られ、テレビ東京「妖怪ウォッチ」(28日同)の録画再生率は19位の4.4%で、リアルタイム視聴率3.7%を上回った。

公表結果や各局幹部の意見を総合すると、情報番組や報道番組の録画再生率は低い傾向にある。だが、若者向けのドラマやバラエティー、固定ファンの多いアニメなどは録画再生率が高く、一概に若者のテレビ離れが起きているとは言えないことが分かる。

中町綾子・日本大教授(ドラマ脚本論)は「視聴者にとって視聴率は人気のバロメーターであり、新たな調査で番組が累計的にどれだけ見られたか分かるようになったと言える。だが、1週間以上たってから録画を見る人も多く、総合視聴率が実態を正確に反映しているとは言い切れない」と分析する。

放送局側の反応は、NHKと民放で分かれる。総合視聴率について、NHKは「多くの人が録画していることが分かった。研究を重ね、より多くの人に見てもらいたい」(木田幸紀放送総局長)と番組作りに生かす構えだが、CM視聴の指標として、リアルタイム視聴率を広告単価に反映させてきた民放は、手放しでは喜べない。視聴者は録画再生ではCMを飛ばして見るケースが多いからだ。

武田信二TBSテレビ社長は「CMを見てもらっているなら、スポンサーに納得してもらえる」と、録画再生時のCMの視聴実態を自局で分析して収入増につなげたい考えを示す。亀山千広フジテレビ社長は、録画再生率が高い番組を有料配信の目玉にすることなどを検討する方針だ。

タイトルとURLをコピーしました