東日本大震災で被災した宮城県東松島市で、最大規模となる防災集団移転促進事業の「野蒜ケ丘」(野蒜北部丘陵)地区の宅地整備が完了し、市は20日、宅地引き渡し式を行った。地区のJR野蒜駅近くには交流や観光の拠点となる野蒜市民センター、奥松島観光物産交流センターがオープン。市は現地で「ひがしまつしま福幸まつり」を開き、新たな街の誕生を祝った。
宅地引き渡しは今年5月、9月に続き最後となり、今回は野蒜駅周辺の東部エリア、中央エリアの計92区画が対象。地区内の宅地は278区画に上る。これにより、市が市全体で計画した宅地717区画が全て被災者に引き渡された。
野蒜市民センターであった式典には、住民や関係者らが出席。阿部秀保市長と住民代表3人が引き渡し書に署名した。
住民代表の一人、学習塾経営熱海治さん(58)は現在、市内の仮設住宅に妻、母親と暮らす。12月中旬には次男夫婦とその子どもが川崎市からUターンする。熱海さんは「家族6人で住む家を建てる予定。これからが大変だが、早く普通の生活を取り戻したい」と前を見据える。
野蒜ケ丘の集団移転促進事業は2012年11月に着工し、高台の山林91.5ヘクタールを造成。JR仙石線の野蒜、東名の両駅が移設され、小学校や保育所、消防署などが配置された。
災害公営住宅(170戸)は来年6~8月に入居できる予定で、最終的に約1400人が暮らす市街地が再生される。市は来年8月以降に「まちびらき」を検討している。
野蒜駅近くに20日開所した市民センター、観光物産交流センターは棟が連なって一体化した施設で、地域の核となる。
市民センターは多目的ホールや児童図書スペースなどを設け、住民らの交流拠点となるほか、非常食を備えて災害時は避難所として使う。観光物産交流センターは観光情報の発信、地場産品の販売などを促進し交流人口の拡大を図る。
阿部市長は「街の機能をまるごと移転した野蒜ケ丘団地は、多くの温かい支援で整備できた。高台移転のモデルとして発展していくだろう」と語った。