<電力自由化1年>切り替え2% 新規参入進まず

2016年4月に家庭を含む電力の小売りが全面自由化され、4月1日で1年になる。東北電力が市場を独占してきた東北6県と新潟県では、新規参入の電力会社(新電力)への契約切り替えが11万500件(2月末現在)になる。10万件の大台を突破したが、全体の2%にとどまっている。
電力広域的運営推進機関によると、全国の2月末の契約切り替え件数は全体の5.0%に当たる311万200件。経済産業省電力・ガス取引監視等委員会は「1年で5%は、先行して自由化した欧州並み。順調なスタートと言える」と説明する。
だが、契約切り替え件数を地域別で見ると、東京、関西、中部の三大都市圏が全体の82.7%を占める。同委員会は「東北など需要規模が小さい地域との差は大きい」と話す。
国に登録した電力事業者も三大都市圏に比べると東北はまだ少ない。全国383社のうち、東北を本拠地にするのは東北電を含めて20社しかない。
全国で5万件弱を獲得した新電力のイーレックス・スパーク・マーケティング(東京)の加藤昭博営業部長は「選択肢の少なさから様子見の顧客が多い上、自由化自体の認知も進んでいない。まずは知ってもらう段階だ」と話す。
市場の盛り上がりが欠ける中、東北の新電力は地道に実績を積む。ふくしま新電力(福島市)は今年2月から家庭向け供給を始めた。LPガス事業を手掛ける親会社アポロガス(同)の顧客を中心に、100件程度を獲得。担当者は「顔が見える地元の電力会社を選びたいという声は多い」と手応えを語る。
一方、顧客の囲い込みに懸命な東北電力。自由化に合わせて新サービスを打ち出したが、認知度はまだ低い。共通ポイントが売りのウェブサービスの登録数は24日現在で20万7000件で、顧客全体の3、4%。電力利用が多い家庭などを対象にした新料金プランの契約数は約1万9300件で、普及はいまひとつだ。
原田宏哉社長は30日の定例記者会見で「成果は着実に現れてきているが、地域の垣根を越えた競争はますます激しくなる。今後も料金プランやサービスの充実で競争力を高めていきたい」と述べた。

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