<震災9年ネット調査>暮らし向き改善傾向 復興実感「二極化」続く

東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で被害を受けた岩手、宮城、福島3県沿岸部の被災者の25.2%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じていることが9日、河北新報社とマーケティング・リサーチ会社マクロミル(東京)の共同調査で分かった。2019年の前回調査から5.2ポイント減り、改善傾向が見られた。

 暮らし向きが「楽になった」との回答は、前年比5.2ポイント上昇し20.1%となり、被災者の復興実感は「二極化」傾向が続く。「変わらない」は前年と同じ54.7%だった。
 「厳しくなった」との回答者からは「企業が少なく人口流出が顕著」「家屋修繕で多額の出費を強いられた」などの意見が寄せられた。「楽になった」と回答した被災者は「高速道路がつながり、施設も新しくなった」などを理由に挙げた。
 被災3県の内陸部や首都圏などを含む回答者全体の暮らし向きは、震災前に比べ「楽になった」が2.2ポイント増の13.5%、「厳しくなった」が0.8ポイント減の15.7%。「変わらない」は70.8%(1.4ポイント減)だった。
 復興の進み具合の印象を10%刻みで選ぶ「復興度」の5グループ平均は60.1%となり、前年比で2.7ポイント上昇した。沿岸部被災者の62.8%に対し、3県内陸部が60.6%、首都圏が52.7%と低下する傾向があり、被災地に関する情報量が影響したとみられる。
 復興が遅れていると思う分野(三つまで複数回答)を選ぶ設問では、沿岸部被災者の回答は「風評被害対策」が最多の34.0%。「防潮堤・高台移転」が28.8%、「道路・鉄道など交通」が28.5%と続いた。
 震災を意識する頻度は「ほとんど意識しない」が沿岸部被災者17.8%(前年比1.0ポイント減)に対し、沿岸部の非被災者33.7%(1.5ポイント増)と差が見られた。首都圏は41.0%(0.3ポイント減)だった。(小沢邦嘉)

[調査の方法]1月24日~2月5日、マクロミルが保有する20代以上のネットモニター1555人から回答を得た。内訳は(1)被災3県沿岸部の被災者309人(2)被災3県沿岸部の非被災者309人(3)被災3県内陸部312人(4)青森、秋田、山形3県313人(5)首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川1都3県)312人。仙台市は宮城野、若林両区を沿岸部とみなした。

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