“サツマイモ発電”に取り組む焼酎製造大手、霧島酒造(本社・都城市)は、昨年9月の発電開始から1年間の売電実績が約1億6000万円に上るこ とを明らかにした。焼酎カスなどを活用するリサイクルプラントや発電設備には全国の自治体や食品メーカー関係者などが相次いで視察に訪れ、産業廃棄物とな る残渣(ざんさ)を有効利用した取り組みが注目を集めている。【重春次男】

焼酎の主原料は「黄金千貫(こがねせんがん)」という種類のサ ツマイモ。同社によると、1日当たり計320トンを加工処理し、一升瓶で16万本分(288キロリットル)を生産している。その過程で、傷むなどして選別 で除かれた不良イモが1日約10トン出る他、蒸留後に残るイモやコメの液状カスも1日に640トン排出される。

同社は2006年、産業廃 棄物となる不良イモと焼酎カスを発酵させてメタンガスを発生させるプラントを整備した。豚の飼料となる焼酎カスの乾燥にガスを利用し、発酵後の沈殿物は農 業用肥料とした。11年には増産に伴ってプラントを増強し、ガスをイモ蒸しや蒸留に使うボイラー燃料にも使い始めた。

ただしガスの使用量 は約50%にとどまり、更に有効活用するため発電事業を計画。14年に約13億円をかけて発電装置3台を設置し、今年8月までに約1000世帯の年間使用 量に相当する400万キロワット時を発電した。メタンガスは100%利用できるようになったという。

発電開始以降、ガスプラントや発電設備の視察が相次ぐようになった。全国の自治体や地方議会、大手食品加工メーカー関係者などで、視察は累計で100件超に上るという。

発電設備の維持費は年間約5000万円。設備投資などを考えれば、売電高はそのまま利益となるわけではないが、田原秀隆・グリーンエネルギー部副部長(47)は「製造工程で出る廃棄物をリサイクルすることで、地域の環境保全にも努めていきたい」と話す。