農林水産省は18日、2020年までの世界の食料需給の見通しを公表した。途上国・新興国の人口増と所得向上による食生活の変化で増え続ける食料需要に増産が追いつかず、食料の不足傾向が強まると分析。コメ、小麦など穀物の国際価格は07~09年平均との比較で24~35%高くなると予測している。
同省は08年度から毎年、食料需給見通しを発表し今回が3回目。米農務省や国際機関の統計を基に独自の手法で試算している。
需要面では、人口増に加え、中国など新興国で肉や乳製品、卵、油脂類などの消費が増え、その生産に必要な飼料穀物や大豆の需要が増加。米国などのバイオ燃料向け需要も伸び、20年の穀物消費は08年より5億トン多い27億トンに達する見通し。
一方、生産面では地球温暖化による洪水や干ばつなどが頻発、水資源の不足も深刻化。単位面積当たりの収穫量が伸び悩むため、穀物生産は08年の22億トンから20年は26億トンに増えるものの需要増大に追いつけず、08年で20%の在庫率は国連食糧農業機関(FAO)が危険水準とする17%を下回り、15%まで低下するとみている。
コメ、小麦、トウモロコシ、大豆の国際価格は08年2~7月に史上最高値をつけた後は下落に転じたが、ロシアが干ばつで穀物輸出を停止した昨年8月ごろから再び値上がり。現在は小麦・トウモロコシで最高値の9割、大豆で7割、コメで5割の水準だが、農水省はいずれも20年までに再び最高値を更新すると予測している。
コメの国際価格は20年に09年より約2割高い1トンあたり704ドル(約5万9000円)、小麦は約5割高の297ドル、トウモロコシも約5割高の224ドルになると予測している。
食料価格高騰は中東諸国で相次ぐ政変の一因とも言われ、サルコジ仏大統領は主要20カ国・地域(G20)首脳会議などの主要議題に価格安定策を据えるよう提案。19日までの2日間、パリで開かれているG20財務相・中央銀行総裁会議や、6月に開くG20農相会合でも対応策が話し合われる予定だ。【行友弥】