東北地方は、景況が緩やかに回復する中で新年を迎えた。世界経済の持ち直しの動きにけん引され、人口減少が加速する東北でも製造業を中心に業績改善が続く。一方、東日本大震災から7年近くがたつ被災地では地域経済を下支えしてきた復興需要の収束が鮮明になりつつあり、「ポスト復興」の姿をどう描いていくかが喫緊の課題として浮上する。東北、被災地で、経済界に新たな挑戦が求められる。
日銀が2017年12月に公表した東北の企業短期経済観測調査(短観)によると、景況感を示す業況判断指数(DI)は全産業で10だった。17年3月の7から横ばいを挟み改善が続く。
けん引役は自動車やスマートフォン、半導体関連の製造業。みやぎ工業会の青沼広利専務理事は「欧米や中国の景気回復による輸出増に支えられた。傾向は18年も続く」と分析する。
一方、製造業はバブル期並みに深刻な人手不足という懸念材料もはらむ。「人手不足で生産数量を抑える企業もある」(青沼氏)とされ、労働条件改善や工業科以外の普通科の高卒者を採用する動きが出ている。
製造業の好況の半面、東北の景気全体の歩みは極めて緩慢だ。
帝国データバンクによる調査でも企業の景況感は力強さに欠け、1年を通じて全国水準を下回った。菅原栄一仙台支店長は「復興需要収束が要因。ポスト復興を見据え、新ビジネス転換や商品の高付加価値化を急ぐべきだ」と呼び掛ける。
東北経済活性化の鍵は訪日外国人旅行者(インバウンド)の拡大だ。観光庁によると、東北の17年1~9月の外国人宿泊者は延べ64万人。過去最多は更新できたが、国内に占める割合は依然1%にとどまる。
フィデア総合研究所(山形市)の斎藤信也主任研究員は「東北に来るインバウンドは訪日経験の豊かな人が多い。リピーターも満足する食や体験を提供することが重要だ」と提言する。